『シン読解力: 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』

大人でも正確に読むのが難しい平易な文章の数々。

私が毎回聞いているラジオ番組「おはよう寺ちゃん」。
5時台に海外で活躍する日本人の現地レポートは毎回楽しみです。
2025年4月29日の5時台のコメンテーターはスウェーデン在住の翻訳家、久山葉子さん。
スウェーデンでは最近、、学校で「紙と鉛筆のアナログ教育」に戻る計画を発表したことを紹介しました。
とりわけ、日本では教育施策を中心にスウェーデンを礼賛する人が多い印象があります。
でも、「スウェーデンを見習って紙と鉛筆のアナログ教育に戻せ!」という声はまだ聞こえてきません。

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書名:『シン読解力: 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』
著者:新井紀子(著)
出版:東洋経済新報社(2025.02)
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著者は『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 AIに負けない子どもを育てる』 で“正しく読む”ことの重要性を世に広めた国立情報学研究所 社会共有知研究センター長・教授。
本作でも“正しく読む”ことの難しさを解説するとともに、訓練による向上の可能性を解説します。

本書では“正しく読む”ことができることが、自分で考えて生き抜くために必要な能力であることを説明するため、ある兄弟のエピソードを紹介しています。
その兄弟とは成田悠輔・成田修造兄弟。
兄・成田悠輔氏は東大卒のイェール大学助教で、弟・成田修造氏は起業家。
どちらの著名な方です。
実はこの2人、かなり、崩壊していた家庭の育ちだということを初めて知りました。
無職の父親は借金を残して失踪。
母親は脳出血を起こし、右半身不随。
もはや、この十代の兄弟にとっての親は子どもを経済的に支援してくれる存在ではありません。

YouTubeで時折流れる「私はインスタント麺を具なしで妹と分け合っています(だから寄付して)」みたいなCMをたびたび見かけます。
なんか、そんな生活になりそうです。

<本文引用>------------
困難に直面したときに、どのような制度があり、どうすれば衣食住が確保でき、大学進学を諦めずに済むかを10代だった2人が大人の助けを借りずに見出すためには、法制度や手続きの書類を読み解くための「シン読解力」が不可欠だったはずです。「2人とも有名進学校に通っていたから」というのは、原因と結果を読み違えています。成田悠輔さんは、東京の有名私立進学校の麻布中学・高校に進みましたが、睡眠障害のため不登校だったと述懐しています。ですから、2人は「シン読解力」を、有名私立中高で身につけたのではなく、それより前の段階で手に入れたはずです。「2人とも頭がよかったから」というのも、やはり原因と結果を読み違えているように思います。むしろ、「シン読解力」が極めて高かったので、勉強には向かないような環境の中でも、学力を高めることができたと考えるほうが自然でしょう。にもかかわらず、多くの人は「あの2人は天才だから」と才能の問題に帰着させようとするのです。(本文より)
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でも、この成田兄弟はそうなりませんでした。
著者はその理由の一つに、この兄弟が“正しく読む”技術を身に着けていたことを挙げています。

本書のタイトルにある「シン読解力」。
あえて、従来から存在する「読解力」と異なる名称を付けた理由を著者は説明します。

<本文引用>------------
私が「AI時代にこそ読解力が重要だ」と強調すればするほど、「国語教育が重要」、「読書が学力の鍵になる」という“誤解”が広がりました。RSTの読解対象から文学作品や評論を外していたにもかかわらずです。
2018年に書き下ろした「AIに教科書が読めない子どもたち」の中で、RSTが測定する「読解力」と読書量には相関が見られない、つまり、読書量とRSTが測る読解力は無関係であることを報告していたのですが、そこのところはよく伝わりませんでした。
また、文学や評論を「読解」の対象から外してしまったことで、少なくない国語の先生方からは、従来の国語教育を否定しているかのような誤解を受けてしまいました。「解釈が一意に決まるはずの文書を多くの人が読めていない」可能性が高いという、これまで知られていなかった事実を、エビデンスに基づいてお伝えしたかったのですが、思わぬ受け取られ方をされてしまったのは、とても残念なことでした。
こうした“誤解”を受けたことで、言葉の持つイメージの力を改めて実感しました。私は「知識や情報を伝達する目的で書かれた自己完結的な文書」を読み解く力という意味で 「読解力」という言葉を使ったのですが、「読解力」という言葉が独り歩きしてしまい、ほかの人には違ったイメージや意味で捉えられてしまう可能性があることを実感したのです。
この苦い経験は、新しい考えを表現するためには、新しい言葉や形式が必要であることを私に痛感させました。「新しい酒は、新しい革袋に盛れ」と新約聖書が戒めるとおりでした。だから、RSTが測る力を「シン読解力」と呼ぶことにしたのです。(本文より)
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私は著者の本を読んでいますが、「読書がいい」とは言っていないんですよね。
多くの大人が“正しく読む”技術を持っていないことが明らかになりましたね。

多くの大人が“正しく読む”技術を持っていないことを説明する問題が紹介されています。

<本文引用>------------
ここからは、「大人が読めなかった新聞記事」をいくつかご紹介しましょう

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問題:01 係り受け解析
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Q 次の文を読みなさい。
ガソリン車からEVへの大転換 「EVシフト」は、自動車部品の製造に欠かせない工作機械にとって、EV部品の増産に向けた設備投資や、新たな加工に対応するための機械更新といった大きな需要が期待できる機会だ。

この文脈において、次の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちからひとつ選びなさい。

大きな需要を期待できるのは( )である。
①EVシフト
②工作機械
③EV部品の増産
④設備投資
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まずは、「係り受け解析」の問題です。
出典は2023年1月17日の日本経済新聞です。中学生の正答率は6.6%、高校生は20.0%に対して大人の正答率は24.4%でした。中高校生よりはだいぶよかったのですが、それでも、大人の中で最も能力値が高い層でも正答率が5割に達しませんでした。最も選ばれた選択肢は「EVシフト」です。この記事は、EVシフトそのものではなく、別のあるものの需要が期待できる、ということを伝えようとしています。  (本文より)
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“正しく読む”ことの難しさを改めて痛感する一冊になっています。
私は会社でマニュアルや社内通達を書く機会が多いのですが、こうしたことを日ごろから踏まえ、“正しく読んでもらえる文章”を意識しながら、文章を書いていこうと思いました。

前作でもそうですが、いつもながら“正しく読むこと”の大切さと難しさを再認識させてくれる内容です。


◆頭の中でシンクロした他の完読作品
『シン読解力: 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 
AIに負けない子どもを育てる』 

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■読んだきっかけ:書店店頭
■読んで知ったこと:大人でも正確に読むのが難しい平易な文章の数々。
■今度読みたくなった作品:『新井紀子の読解力トレーニング』新井紀子
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シン読解力―学力と人生を決めるもうひとつの読み方 - 新井 紀子
シン読解力―学力と人生を決めるもうひとつの読み方 - 新井 紀子









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