中立な立場で冷静に状況を見る。
大好きな漫画に『東周英雄伝』という作品があります。
どのエピソードも好きですが、中でもお気に入りは「おれの舌はまだあるか?」と「萬葥穿心」。
「萬葥穿心」は孫臏(ぴん)と龐涓のお話です。
このエピソードの冒頭、この2人は同じ師匠の門下生として登場します。
この師匠が「鬼谷子」で、初めて、その名前を知りました。
私の中国古典の物色は岩波文庫の『論語』、『孫子』、『韓非子』、『史記』から始まっています。
でも、私の知らない中国の古典はまだまだたくさんあります。
これからも、読んでいきたいと思います。
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書名:『鬼谷子 全訳注: 中国最古の「策謀」指南書』
著者:高橋健太郎(著)
出版:草思社(2024.12)
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著者は作家。
本作は、今から二千数百年前、縦横家の祖とされる鬼谷によって書かれたと言われている中国古典『鬼谷子』の全訳注書です。
縦横家。
縦横家とは遊説家とも呼ばれ、中国戦国時代に自らの弁舌を武器に各国を渡り歩き、言葉一つで王たちを動かし、ときにライバルをおとしいれ、天下の趨勢を左右します。
私が好きな張儀、そして蘇秦は、まさに縦横家です。
読んでいくと、私がサラリーマン生活で日ごろ気にしてることがたくさん出てきて驚きました。
まずは、私、上司と話す前に、相手がどんなことを考えているか、どんなことを良し(悪し)とするかを考えたうえで話すようにしています。
ですから、上司によって、言っていることが微妙に違っているのはいつものことです。
<本文引用>------------
「相手の「類」を把握する
そもそも賢人と不肖の者、智者と愚者、勇者と臆病者には性質に違いがあります。
その「類」の違いに合わせるからこそ、正しく口を開くこと・閉じること、正しく進むこと・ 退くこと、正しく残しむこと・貴ぶことが可能になり、ことさらなことをしない(「無為」)でも、相手を治めることができる。
相手の中に何が有るか無いか、充実しているか虚ろであるかを詳しく見定める眼を持ち、「何を欲しがっているのか」という欲求から、「何をしようとしているのか」という意志を見極めること。
そして、ひそかに相手の言葉を並べて吟味し、それに従って口を開いて働きかける(「反」)ことで、相手の中の実質を求め、言葉の指し示すものをつかむことが大事なのです。
つまり、まずは口を閉じて相手の言葉を聴き、それから口を開いて言葉で働きかけ、自分の利となる所を求めるのです。(本文より)
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また、話している間に相手がつまらなそうな表情をしたときは、怒りモードが見えてきたら、早めに切り上げるか、微妙に話題の方向を変えます。
<本文引用>------------
本心を把握してから口は開く
ある時は口を開いて考えを示し、ある時は口を閉じて考えを隠さなければなりません。
つまり、相手の本心とこちらの謀略がマッチしているときは開いて示し、食い違っている場合は閉じて隠すのです。
話していいのかどうかを知るには、自分の謀略の持つ性質をはっきり把握し、それが相手の本心とマッチしているかを見極めること。相手に就くか離れるかには守るべきことがあり、それは相手の意志に従って判断するということなのです。
そして、口を開くならば完全に周知させることを一番に考え、口を閉じておくならば完全に秘密にすることを一番に考える。この、完全なる周知と秘密を貴ぶ教えは、微妙で奥深く「道」 の働きに沿ったものなのです。(本文より)
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それに、どんなに一所懸命時間をかけて考えた企画でも、場合によってはさっさと取り下げます。
<本文引用>------------
そもそも、こちらの謀略に相手の心にかなわないこと(「内に合せざる者」)があれば、それを実行してはいけません。
だからこそ、適切なタイミングをはかりつくし、相手の中の好都合な要素を見つけ、それに従ってこちらの振る舞いも変化させようとしていく。そうした変化によって相手の心にかなおうと(「内」)すれば、カギによって門のかんぬきを取り去るようにたやすく謀略は成功するのです。(本文より)
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以前、この話を同僚に話したら、「それってもったいなくね?」と言われました。
でも、私はそうは思っていません。
世の中の流れや常識は変化します。
それは上司の価値観だって同じこと。
そもそも上司がずっと変わらないような環境は危ないと考え、社内異動で転職なみの気分転換が図れる大きな会社ばかりに入ろうとしているわかですから。
進むべきか、引くべきかを考えるのではなく、常に中立な立場で状況を見る。
<本文引用>------------
つまり、『鬼谷子』の内容自体はあくまで中立的な理論と技術であり、それをなんのために使うのかは学ぶ者の自由なのです。
鬼谷先生の弟子とされる蘇秦と張儀は、ここで説かれる同じ理論と術を用いながらも全く真逆のことを成し遂げようとしたと伝えられます。つまり、蘇秦は最強国・秦に対抗するために合縦策(秦以外の国で同盟を結ぶ策)を実現しようとし、張儀は秦のために連衡策(各国が個別に楽と同盟を結ぶ策)を試みたのです。
このことは『鬼谷子』の内容を理解する上で大事なポイントです。ここには崇高な理念も邪悪な意図もありません。崇高に使えば崇高になり、邪悪に使えば邪悪になる。それが『鬼谷子』の術なのです。(本文より)
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進むのか引くのか、進むならどのように進み、引くならどのように引くのか。
方針や施策に絶対の解は内容ですか、「中立な立場で冷静に状況を見る」は変わることのない大切な心構えのように思いました。
漢文の日本語訳の多くは、
白文(漢字だけで書かれた文章) 例)花開鳥啼
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書き下し文(訓読文を漢字と仮名で書き改めたもの) 例)花開き、鳥啼く
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口語訳 例)花は開き、鳥は啼く
↓
注釈・解説
と書かれているものが多いのですが、本作は、先に「口語訳」を持ってきており、
口語訳 例)花は開き、鳥は啼く
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書き下し文(訓読文を漢字と仮名で書き改めたもの) 例)花開き、鳥啼く
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注釈・解説
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白文(漢字だけで書かれた文章) 例)花開鳥啼
と書かれいます。
著者が読者にまっさきの内容の面白さを伝えたいからなのかもしれませんね。
◆頭の中でシンクロした他の完読作品
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■読んだきっかけ:図書館
■読んで知ったこと:中立な立場で冷静に状況を見る。
■今度読みたくなった作品:『墨子 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』草野友子
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