組織内に巣食う宿職。
2007年(平成19年)、日本郵政公社は郵政民営化関連法により、日本郵政(株)と4つの事業会社(①郵便事業(株)、②郵便局(株)、③(株)ゆうちょ銀行、④(株)かんぽ生命保険)に分かれ、民営化されました。
日本郵政グループの誕生です。
2012年(平成24年)、法改正により、郵便事業(株)と郵便局(株)が統合され、日本郵政グループは日本郵政(株)と3つの事業会社(①日本郵便(株)、②(株)ゆうちょ銀行、③(株)かんぽ生命保険)となりました。
とはいえ、郵便局に口座を持たず、保険にも入っていない私にとっては、日本郵政グループとのお付き合いは、荷物の受け取りや、速達などの誘導くらい。
そのために行く郵便局もまったく変わっておらず、正直、サービスが良くなったのかも、悪くなったのかもわかりません。
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書名:『ブラック郵便局』
著者:宮崎拓朗(著)
出版:新潮社(2025.02)
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著者は日本郵政グループを巡る取材、報道で数々の受賞歴を持つ西日本新聞社北九州本社編集部デスク。
日本郵政グループの内部に巣くう問題点を明らかにします。
ここ10年(2015年~2025年)に明らかになった日本郵政グループの主な不祥事です。
2019年:かんぽ生命の保険商品に関する不正販売が発覚し、金融庁から業務停止処分を受けました。この際、顧客情報の不正利用も問題となり、大規模な不正が明らかになりました。
2023年:郵便局内で顧客情報の不正利用や、関東地方の郵便局長会による不適切な活動が問題視されました。
2025年:全国の郵便局で点呼不備や虚偽記録が横行していたことが判明し、貨物自動車運送事業の許可取り消しを含む厳しい処分が下されました。また、保険販売において法規に沿わない勧誘が行われていたことも発覚しました。
なんかこう、まったく、反省しない組織のお手本みたいです。
なんか、保険販売に不祥事が目立つような気がします。
<本文引用>------------
郵政グループは、郵便、保険、貯金事業を取り扱い、約36万人(23年度)の従業員、約2万4000の郵便局を抱える巨大組織だ。2007年に始まった郵政民営化により、かつて国営だった組織は市場原理にさらされた。
地方には赤字の郵便局も多いが、郵政グループは、全国の隅々にまでサービスを提供するよう法律で義務付けられている。そんな制約に加え、約1万9000人の小規模郵便局の局長たちが統廃合に強く反発し、郵便局網の合理化には手を付けられない。収益を上げるため、保険や貯金の金融事業に過度に依存する構造が生まれていった。
無理が生じるのは当然の帰結だった。
保険営業の現場には、法外な営業目標が割り当てられ、高齢者を狙った詐欺まがいの営業がはびこる。コストカットが求められる配達現場には、「時短」を強いる厳しい指導が横行した。
末端の局員たちは会議や研修の場で罵声を浴び、次々に心を病んでいく。利益のために違法行為が黙認され、声を上げる者はつぶされた。(本文より)
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とまあ、これだけ読んでいると、つぶれそうな会社ですが、そうはならないのが日本郵政グループの特殊なところ。
それが「政治」との強い繋がりです。
<本文引用>------------
「既得権」を守ろうと政治にすがる郵便局長たちは、不正な手段もいとわず選挙の票集めに執着する。(本文より)
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この政治との結びつきを活かし、この結びつきを強めるのが「局長会」という組織。
<本文引用>------------
全国約2万4000の郵便局は、三つの種類に分類される。
①郵便物の配達も含め多様な業務を行う地域拠点の大規模局(約1200局)
②窓口業務を担う町中の小規模局(約1万9000局)
③個人事業主などに切手販売など窓口業務を委託している簡易郵便局(約4000局)
このうち、②の小規模局の局長たちが組織しているのが局長会だ。
正式名称は「全国郵便局長会」。1953年に設立され、約1万9000人の局長のほぼ全員が所属している。会則の第3条には、「会員の勤務条件の向上を図る」と労働組合のような目的を掲げているが、法的な位置づけのない「任意団体」だ。(本文より)
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その局長会が日本郵政グループという企業の人事権に大きな影響を与えます。
<本文引用>------------
取材に応じた複数の関係者が「会社側は、局長会が事前に人選していることを把握しており、 局長会が適任者と認めた人物しか採用試験に合格できない仕組みになっている」と口をそろえる。
局長会が人選するに当たって重視するのが「世襲」だ。
これを裏付ける内部資料がある。2018年1月、役員らが出席した局長会の「人事制度・人材育成専門委員会」の議事概要。この日の委員会では、全国の小規模局長1万8730人の属性を調査したところ、5004人が「局長経験者の親族」だったとの結果が報告されている。 つまり、約27%が「世襲」の局長だ。
日本郵便という大企業の管理職が、これだけ高い割合で世襲によって引き継がれていることに驚かされる。しかしこの委員会ではむしろ「27%まで低下」「ショッキングな結果」との見解が示され、「親族からの局長任用率低下の原因分析とその向上策」を検討していくとの方針が記載されている。(本文より)
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企業が再生するなら「人」に手を付けなければなりません。
しかし、それを経営陣が行うことができない組織。
それが日本郵政グループのようです。
<本文引用>------------
局長に誰を採用するのか、そして誰を出世させ、または冷遇するのかといった権限を、局長会の幹部が一手に握っていることになる。その結果、局長たちは幹部に逆らえず、「局長は内部通報をしてはいけない」「局長会を除名になれば、会社の役職に就いてはいけない」といった、世の中の常識では考えられない理屈がまかり通ることになるのだ。
一方で、雇用主であるはずの日本郵便は、局長会に人事権を握られ、会の不適切な活動にも口出しができない。裁判を通じて、会社と局長会とのいびつな関係を目の当たりにした壬生弁護士は「局長会は、日本郵便にとって、組織内に巣食う宿職のようなものだ」と語っている。
「宿痾」――。それはつまり、長い間治らない病気のことだ。(本文より)
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そんな組織、どんどん衰退しそうですが、それを支える組織があります。
それが、政権与党です。
<本文引用>------------
2013年約43万票、16年約52万票、19年約60万票――。局長会は自民党が政権復帰して以降の参院選で、自民党公認を得た組織内候補の得票数を伸ばし続けてきた。いずれも党内トップでの当選だ。
局長会が選挙に力を入れるのは、自分たちの声を代弁する議員を国会に送り込むことだけが狙いではない。
組織内候補が当選すれば、自民党の所属議員が一人増えることになる。それにとどまらず、参院選の比例代表は合計得票数によって政党ごとの議席数が決まるため、局長会が多くの票を集めれば集めるほど、自民党の当選者数を増やすことに貢献できる。つまり、自民党に恩が売れるのだ。
候補者を擁立しない衆院選でも、個別に自民党の候補者を支援している。
21年秋の衆院選の前、局長会は内部向けの文書で「次期衆院選の対応」として次のような方針を伝えている。(本文より)
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先日読んだ『食料安全保障の研究 襲い来る食料途絶にどう備えるか』では、農協(JA)、農林族議員、農林水産省による「農政トライアングル」が詳しく解説されていました。
世襲で自分の既得権を守りたい小規模局の局長、そんな意見を取りまとめ、政治に働きかける局長会、それを後ろ盾にする郵政族議員って感じですね。
本作では、成果の上がらない局員をどう扱うかなどの生々しい事例が紹介されています。
また、はがきや物販、みまもりサービスで行われている「自爆営業」が紹介されています。
なんか、ここまでブラックがまかり通るのも、トライアングルのおかけなんでしょうかね。
本作、相当の内部情報の提供を受けているせいか、活字だけでも生々しく郵便局で行われる「ブラック活動」が紹介されています。
今は転職が容易になっている時代。
ますますこういう情報は外に出やすいのかと。
こうした内部情報は今後も次々と著者に寄せられるのだと思います。。
そして、ブラック企業はますます「密告による犯人探し」や「法的措置の喧伝」に力を入れるんでしょうね。
◆頭の中でシンクロした他の完読作品
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■読んだきっかけ:日経ビジネス 2025.03.03号「今週の1冊」
■読んで知ったこと:組織内に巣食う宿職。
■今度読みたくなった作品:『郵政腐敗 日本型組織の失敗学』藤田知也
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