『月刊正論2025年5月号』

「ザイム真理教」の次に出てきた「ゲンゼイ真理教」。


2025年夏に予定されている参議院選挙。

7月3日公示、20日投開票が想定されています。

各党の選挙公約が出始めています。

与党である自由民主党と公明党は物価高対策として「給付」を掲げています。

「減税」は掲げていません。

では、野党はどうかというと、食料品の消費税の税率の減税など、見事に「減税」を掲げています。

与党と野党の物価高対策として、見事に分かれていますね。


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書名:『月刊正論2025年5月号』

著者:月刊正論編集部

出版:日本工業新聞社(2025.04)

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本誌は1973年11月創刊の保守系の言論誌。

本号の特集は

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特集:トランプの衝撃

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です。


2025年6月、コンビニ大手3社は2021年産の政府備蓄米の店頭販売を決めました。

いわゆる「古古古米」です。


TVでは連日、「どこで売られた!」や「朝5時に並んで買いました!」といったコメの消費者の声ばかり。

でも、根本的なコメ問題に掘り下げるTV報道が無いような印象です。


山下一仁氏(キヤノングルーバル戦略研究所研究主幹)は寄稿する「令和のコメ騒動 農水省が招く飢饉」で現在のコメ農業の問題を解説します。

兎に角、農林水産省はコメの値段を下げたくないようです。

そして、それはよりによって「古古古米」の前の最初の備蓄米の放出でもそのスタンスは変わっていないと指摘しています。


<本文引用>------------

備蓄米の放出でも農水省は米価を下げない仕組みを考えた。一つは売却先を、消費者に近い卸売業者や大手スーパーではなく、備蓄米放出に反対しているJA農協とした。2万トンの備蓄米が卸売業者に流れても農協がその分、従来からの卸売業者への販売量を減らせば、市場への供給量は増えず価格は下がらない。もう一つは、一年後に備蓄米を買い戻す。今年産のコメが増産されて米価が下がることに対する防止策である。


コメに関する報道で、決まって取上られるのは

「コメを作っても赤字」

「コメを作っても儲からない」

「米作りはとても子や孫に継がせたくない」

といったコメ農家の悲痛な声。


しかし、同氏はこうした声の問題を指摘します。


<本文引用>------------

今回の米価上昇でコメ農家はやっと一息つけるとか農家は時給10円だとかという報道が行われている。しかし、何十年も前から1へクタール未満の零細な兼業農家の所得はマイナスだった。確かに、これらの農家の農業収支は今回の米価高騰でプラスになった。しかし、これまで町で高いコメを買うよりも自分でコメを作った方が安上がりなので、赤字でもコメを作り続けてきただけだ。減反・高米価政策は本来、市場から退出すべきゾンビ農家を温存してきた。欧米ではパートタイム農家と呼ばれる零細規模の兼業農家はコメ農業の担い手ではない。フランスでは農政の対象ですらない。

米価が1万5千円だった2020年でも、20~30ヘクタール層では877万円、30~50ヘクタール層では1,227万円、50ヘクタール層では1,881万円の所得となっている。1ヘクタール未満層は戸数ではコメ農家の52%を占めるが面積では8%を占めるに過ぎない。逆に、30ヘクタール以上層は戸数では2.4%だが面積では44%も占めている。現在のコメ作の主体は大規模な主業(専業)農家や法人が担っている。これらのなかには今回の米価高騰で輸出ができなくなり困難を抱えている農家もいる。かれらは、米価は1万円でよいので、欧米のように直接支払いに移行すべきだと主張している。(本文より)

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米生産の生産量の主体者ではなく、生産者の頭数の主体者を優先しているということなんですね。


<本文引用>------------

しかし、農水省は減反・高米価政策を止めようとはしない。それは二人三脚で行動するJA農協の発展の基礎だからである。米価を高く支持したので、コストの高い零細な兼業農家が滞留した。かれらは農業所得の4倍以上に上る兼業(サラリーマン)収入をJAバンクに預金した。また、農業に関心を失ったこれらの農家が農地を宅地等に転用・売却して得た膨大な利益もJAに預金され、JAは預金量100兆円を超すメガバンクに発展した。減反で米価を上げて兼業農家を維持したこととJAが銀行業と他の事業を兼業できる日本で唯一の法人であることとが絶妙に絡み合って、JAの発展をもたらした。(本文より)

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国民民主党の人気のきっかけになった「現役世代の手取りを増やす」が、なんだか「減税する」に変わっているように感じている昨今です。


こうした「減税ブーム」も問題点を原英史氏(政策シンクタンク代表)の「連載「暴走する新聞報道」第29回」で指摘します。

それが、「ゲンゼイ真理教」の教義を検証する《暴走する新聞報道》」。


<本文引用>------------

いわゆる「百三万円の壁」問題は、予算成立に向けた与野党協議の最大の争点となった。結局「百七十八万円」には至らず、公明党の発案した「年収制限付き百六十万円」案で自民・公明・維新が合意して衆院可決となった。この決着に対して、国民民主党は「百七十八万円と約束したはず」「細かい所得制限により“異形の姿”になった」などと猛反発し、年収制限撤廃とさらなる引き上げを目指している状況だ。

昨年十月以来、「基礎控除の引き上げ」という小難しい話が国民の大関心事になった。これは、国民民主党の快挙といってよい。半面、副次効果として、「ザイム真理教」対「ゲンゼイ真理教」の二極対立が生じつつある。 前者は 「財政均衡こそが正義」、後者は 「減税こそが正義」と唱える。議論がかみあわないから、財務省解体デモのようなことが起きる。

私は、どちらの立場でもない。まず、財政均衡派(収支均衡を最優先)と積極財政派(不況期等には機動的な財政出動を優先)の対立に関しては、後者の立場だ。財務省は前者に寄り過ぎた。一九九七年や二〇一九年の消費税引き上げで、回復の兆しの見えた経済を再失速させた。財政危機のリスクを唱え続けたが、オオカミ少年状態になっている。(本文より)

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現在の世論の動きを「ゲンゼイ真理教」とします。

特に「ゲンゼイ真理教」が主張する「取りすぎたんだから返すべき(還元するべき)という主張。


<本文引用>------------

三つ目の度の一が増えたら還元すべき」もおかしい。

所得税には、財政調達のほかにも、重要な機能がある。一つは、すでに触れた再分配機能。もう一つが、経済の自動調節機能(ビルトインスタビライザー)だ。好況時に人々の所得が増えると、累進税率のもとで高い税率が適用されて納税額は大きく拡大する。

結果として、政府から民間への資金供給が減り、インフレなどの過熱を抑える。一方、不況時には納税額が減り、逆に経済の早期回復を促す。図3に戻れば、特に米国が典型的だが、所得税は変動幅が大きい。これが正常な状態だ。

「税収が増えたら還元」してしまったら、インフレの起きつつあるときには加速してしまう。もちろん一定の留保条件(例えば「現在生じている税収増は、特に法人の海外収益に伴う法人税収の増加が大半。国内の経済はさほど良くなったわけではないので、国民の多くへの還元が必要。還元しても、インフレが加速する経済状況ではない」といった状況)のもとであり得ないわけではないが、 「還元」が当然かのような教義は危険極まりない。(本文より)

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単純化するとわかりやすいですが、それも危険ですね。


<本文引用>------------

以上のとおり、「ゲンゼイ真理教」の教義は、かなりおかしな点が多い。本稿では触れる紙幅がないが消費減税論も同様だ。こうした検証を踏まえれば、「年収制限付き百六十万円」案は、政治的思感はともかくとして、そんなに悪い結論ではない。まず、莫大な課税ベース侵食を押しとどめたことはよかった。さらに今後に向けて、税制の抜本改革にもつながる内容だ。 修正案は、形式上は「年収制限付きの所得控除」だが、実買的には「定額二万円の税額控除(対象は年収八百五十万円まで)」に等しい。これを起点に、次のステップとして「所得控除から控除へ」の転換、さらに「給付付き税額控除」の導入を進めたらよい。

その際、現役世代と高齢者の課税最低限の均一化など、より公平・簡素な税制も課題になろう。さらに社会保険料や資産課税、消費税なども含め、国民の負担構造のあり方につき議論を深める契機としたらよいだろう。

大事なことは、国家にどんな機能を求めるのか、そのため国民はどの程度の負担をするのか、どんな負担構造が適正なのかについて、健全な議論のできる上儀を作ることだ。これは、政党・マスメディア・専門家・言論人の責務だ。それを抜きにし、ただ「財政均衡を」「減税を」と唱えていても、国家の運営を危うくするだけになりかねない。(本文より)

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単純でわかりやすい解を求める。

それはそれで自然の流れなのかもしれませんが、政策って、そんなに単純に決めて、それだけに従って突っ走っては危険なんですね。



◆頭の中でシンクロした他の完読作品

『月刊正論2025年5月号』 


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■読んだきっかけ:『月刊正論2025年4月号』 月刊正論編集部

■読んで知ったこと:「ザイム真理教」の次に出てきた「ゲンゼイ真理教」。

■今度読みたくなった作品:『月刊正論2025年6月号』月刊正論編集部

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