イスラエルにとって好都合な2地区に分かれたパレスチナ自治区。
2023年10月7日、イスラエルでイスラム原理主義組織ハマスによる大規模攻撃が発生しました。
ハマスは5000発(ハマス主張)のミサイルをイスラエル南部から中部へ向けて発射。
イスラエルに侵入、次々と民間人を殺害。
イスラエル側では1300人ほどが殺害され、250人がテロリストらによって、人質としてガザに連れ去られました。
この報復として始まったのが現在のイスラエル軍のガザ地区への攻撃です。
――――――――――――
書名:『なぜガザは戦場になるのか -イスラエルとパレスチナ 攻防の裏側-』
著者:高橋和夫(著)
出版:ワニブックス(2024.02)
――――――――――――
著者は中東を専門とする放送大学名誉教授。
イスラエルの報復が続くこの時期、直近の出来事だけでなく、過去の歴史を踏まえ、続く紛争の裏側を解説しています。
2023年10月のテロ直後、メディアでは、ハマスを非難する論調が強かった印象です。
しかし、何人かの国際政治学者は、結構、冷静なトーンで反応。
すると、「ハマス悪し!」の陣営が、Xやユーチューブなどを舞台にこうした国際政治学者を名指しで非難。
私が見る限り、著者のそうした非難された学者の一人でした。
<本文引用>------------
テロを生み出したのは、封鎖と占領という構造的なテロであり、抑圧であり、暴力である。パレスチナの人々に尊厳ある生活への道筋を示さない限り、ガザの悲劇も、バレスチナ全体の苦しみも続くだろう。そしてイスラエルの人々にも、真の平和は訪れないだろう。
ガザの爆発から4カ月目に入ろうとする2024年1月に
高橋和夫(放送大学名誉教授)
(本文より)
------------------------
うーん、著者はメディアで勢いのいい言葉を発するかわりに、執筆の準備を着々と進めていたんですね。
まず、著者がパレスチナ問題を語る上で決まって登場するイスラエルとパレスチナ自治区の地図の間違いを指摘します。
<本文引用>------------
マスメディアでの報道で違和感を覚える点がもうひとつある。パレスチナ自治区についての不正確な地図である。地図は、イスラエルという国家の右側にヨルダン川西岸地区、左側にガザ地区が描かれ、この2カ所をパレスチナ自治区としている。この地図を見るけどもそれなりの生活があって、パレスチナ人が自治をしているのだろうから、何の文句があるのかという印象になる。なぜパレスチナ人が怒っているかが伝わらない。“テロ”を起こすほど抵抗する理由が伝わらない。しかし、実はその印象と大きく異なる。
ガザは封鎖され、壁の向こうに移動できない。電気も水も食料も外から供給されるが、容易には運ぶ許可が出ないため、生活に支障を来している。ヒトとモノの動きが制限さ通常でさえ、自由な行き来ができない。海も封鎖され漁師も沖合まで出ての漁ができない。“自治”どころか息も詰まるような状況である。そして西岸は実際に“自治”が許されているのは、ごく限られた穴のようなエリアでしかない。その他はすべてイスラエル軍が管理し、あちこちにイスラエルの入植地がつくられている。その実態を示す地図が使われていない。
筆者は、その元凶は日本外務省の地図ではないかと考えている。なお、かつては高校の教科書の地図も同様だった。だが最近は改善されてきている。筆者も含め多くの者が声を上げたせいだろうか。つまり外務省も新聞もテレビも、高校の教科書に正確性で負けていることになる。(本文より)
------------------------
本書には絵が描かれているんですが、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区って、ものすごく、まだらになっているのがわかります。
このまだら状態を作っているのが、イスラエルの入植地というわけです。
<本文引用>------------
入植地にも二種類ある。ひとつはイスラエル政府公認の入植地である。政府が予算を組んで建設し、家賃を安くして人々を住まわせている。もうひとつは、過激な入植者がパレスチナ人の土地を奪い勝手に作った入植地である。「アウト・ポスト」と呼ばれるこのような入植地は、イスラエルの裁判所が違法と認定している。ネタニヤフ政権は、このような人々の行動を止めるどころか、そのほとんどを後付けで承認してきた。そして勝手に作った入植地であっても、後付けで政府が認めれば「ユダヤ人をバレスチナ人から守るため」との名目で、兵士が派遣され保護する。国際法の基準からすれば、どちらの入植地であっても違法である。
国連は再三にわたり、イスラエルの入植地の撤去を求めてきた。しかし、イスラエル政府はその告を無視し入植地を拡大し続けている。(本文より)
------------------------
ガザ地区とヨルダン川西岸地区に分かれているパレスチナ自治区。
この状態は、実はイスラエルにとって好都合のようです。
<本文引用>------------
と言うのは、第1章でも触れたが、イスラエル政府はこれまで、ハマスを殲滅しようとはしてこなかった。むしろハマスを飼ってきた、あるいは育ててきたという面がある。なぜなら、アラファト率いるPLOが強くなりすぎないように、対抗勢力を育てパレスチナ人同士を争わせることは、イスラエル政府にとって有利となるからだ。イスラエル側は、パレスチナ国家の樹立を前提とした和平交渉を行いたくない。占領地からの撤退入植地の撤去についての議論もしたくない。そのため、イスラエル側にとって、少なくともこれまでは、ハマスが存在することは都合がよかった。パレスチナの政治勢力が2つに分かれていて、交渉主体がいないために、イスラエルとしては交渉したくてもできない、という言い訳ができるからだ。
イスラエルのタカ派にとって、ハマスは生かさず殺さずにしておけば良いという立場が続いていた。特に、2009年から長い間、首相の座についていたネタニヤフは、そくその匙をよく心得ていたはずだ。(本文より)
------------------------
本書では、パレスチナ人の大学での勉学ぶりも紹介しています。
こうした勉学を通じていけば、国際政治でどう立ち回るのが自国に有利かわかりそうなもの。
少なくとも、ガザ地区で民間人を大量に犠牲になるシーンを世界に流すよりも、もっといい方法があるように思ってしまうのは、私だけなのかな。
イスラエルにとってのハマスがどういう存在だったのかがよくわかる一冊でした。
◆頭の中でシンクロした他の完読作品
『なぜガザは戦場になるのか -イスラエルとパレスチナ 攻防の裏側-』
――――――――――――
■読んだきっかけ:YouTubeチャンネル「著者が語る」を紹介したXのポスト。
■読んで知ったこと:イスラエルにとって好都合な2地区に分かれたパレスチナ自治区。
■今度読みたくなった作品:『なるほどそうだったのか!!パレスチナとイスラエル』高橋和夫
――――――――――――







この記事へのコメント