リスキーシフト、コーシャスシフト。
親の介助のために頻繁に静岡県静岡市の実家に帰っています。
実家では、私がとうに止めている新聞を購読しており、私もついつい読んでしまいます。
新聞は「静岡新聞」。
いわゆる地方紙ってやつです。
そこで必ず目にするのが特殊詐欺の被害を報じる記事。
税の還付金といった新しいバージョンから、お孫さんのピンチを救うための古典バージョンまで、さまざま掲載されています。
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書名:『なぜ人は騙されるのか -詭弁から詐欺までの心理学』
著者:岡本真一郎(著)
出版:中央公論新社(2019.05)
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著者は愛知学院大学の心身科学部心理学科教授。
人が騙されるメカニズムを解説します。
いまではすっかり定着しておるコンビニエンスストアのトイレ。
もともとインドア派の私。
自宅と会社以外のトイレをほとんど使ったことのない私、コンビニエンスストアのトイレに入って目に付いたのが「貼り紙」。
「いつも清潔にご使用いただきありがとうございます」
これを初めて見たとき、なんか、「きれいに使わなくっちゃね」なんて思ったものです。
<本文引用>------------
感謝を先に言う
コンビニのトイレなどで「いつも清潔にご使用いただきありがとうございます」といった張り紙を見かけることがある。ゴミ箱などにも「ゴミの分別にご協力いただき、ありがとうございます」という掲示がある。
言うまでもなく、「ありがとう」と言うのは、通常は相手の行動を受けてからのはずだが、ここでは違う。相手に期待する「清潔にする」という行動を先取りしたメッセージである。もちろんこれは清潔にすることが社会規範である」という前提があるからなのだが、こうした表現法の効果はどうなのだろうか。日本で行われたある研究では、この先行型の表現の張り紙と「清潔に使用しましょう」といった張り紙の印象を比較すると、先行型のほうが印象がいいし、それに従おうという気持ちも強くなったことが報告されている。感謝先行型メッセージは読んだ人に、「他の人たちは規範に従って清潔に使用している」という推測させる。そこで、「その規範に従わなければ」という効果(同調効果)をもたらす。また、形式上はお礼を言っているから、「相手からお礼を言われたら、お返しをする」という気持ちが効果をもたらす可能性もあるとされる。(本文より)
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でも、万能ではないようです。
<本文引用>------------
ただし、こうしたメッセージの効果が現れやすいのは、実際に規範が守られている、つまりゴミ分別の例で言えば、分別場がきれいな場合に限定されるようである。(本文より)
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なるほど。
<本文引用>------------
それに、丁寧さがわざとらしく感じられるようになると逆効果である。右の研究は二〇〇九年に発表されたものだが、それよりも最近の研究では感謝先行型メッセージはよい印象を与えていないし、説得効果にはむしろマイナスの影響を与えているという。「こうしたメッセージが登場したのは二〇〇〇年ぐらいから」であり、最近の傾向については次のようだという指摘がある。
メッセージのスマートさが受けて、あちこちで見かけるようになると、何か送り手のあざとさ(説得意図)が見え隠れしてきて、何かメッセージに応じる気がなくなってくるかもしれません。
「ああ、またこれか」となると、じっくり送り手の意図を推測するようになって(システマテ処理)、説得効果が弱まってきたということなのかもしれない。(本文より)
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同じことをやっていると、「ああ、またか」になってしまうんですね。
特殊詐欺の被害。
被害者からのアンケートが紹介されています。
<本文引用>------------
罠にはまりやすい人
以上いくつかの悪質商法を見てきた。どんな人が巻き込まれやすいのだろうか(これは前節特殊詐欺にも当てはまる)。指摘されていることを紹介する。
まず、「私は詐欺に狙われるタイプではない」「詐欺被害にあったタイプの人は、正直言うと、少し馬鹿なのかと思う」というように考える人は危険である。実際、二〇一七年に発表された群馬県警の調査によれば(二二二名の被害届出のうち八九名が回答)、県内で特殊詐欺の被害に遭った人は皆「振り込め詐欺」という言葉は知っており、「八三%は自分は騙されないと思っていた」という)。これは正常性バイアスの罠である。
このほか、苦情を言われるとへこみやすいようなストレスに弱い人、運勢や占いなど非科学的なことを信じやすい人、肩書きなど権威に弱い人、さらに、人に嫌われないようにする、自分が相手にどう思われるかが気になる、お人好しなど誠実な性格の人も悪質商法にはつけ込まれやすいという。誠実な性格が危ないのはなぜかと言えば、悪質な相手であっても断りにくく相手に応じてしまいがちになるからである。
自分の日頃の行動人との接し方を振り返っておくことも無駄ではあるまい。(本文より)
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なんか「「振り込め詐欺」という言葉は知っており・・・」が危ないような・・・。
私、仕事やっていると、「言葉」を知っているけど、その「言葉」の「意味」を全く理解していない人を山ほど見ています。
ですから、「知っています」という言葉を、そのまま受け止めては危ないですね。
本作、詐欺行為の対象が「政治」に移ってきます。
<本文引用>------------
集団分極化
現象さて、SNSで意見が分極化するとすれば、たとえば政治的右はいっそう右寄りに、左はいそう左寄りにと極端化していくとすれば、そこにどんな心理的メカニズムが働いているのであろうか。
そもそも人が話し合いをすると、意見は妥当な方向にまとまっていくのだろうか。一見これは自明に思われるかもしれないが、実は必ずしもそうではない。話し合うことによって意見が一つの方向に極端化し、よくない結論が導かれるという実例は多く知られているし、実験でも検証されている。たとえば、ベンチャービジネスを起こそうという場合に、一人で考えるときよりも皆で考えたほうが、ハイリスクなやり方を選んでしまう(これを、リスクの高いほうへの極端化で、リスキーシフトと呼ぶ。逆の安全な方向への極端化[コーシャスシフト]もありうる)。こうした現象を集団分極化と呼ぶ。
集団分極化が生じる理由の一つに、意見が交わされる中で、説得力のある議論がいろいろ提出されることがある。それが積み重なることで極端になる(a、議論の積み重ね)。また、理想的だと思われるような極端な意見が示されれば、昔からよく思われようとして、それに近づけようとする(b、理想化)。さらに、仮に極端な決定が不首尾に終わっても自分だけの責任ではないから、気が楽である(c、責任の分散)。(本文より)
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「リスキーシフト」「コーシャスシフト」
これって、政治だけでなく、会社でもよくある場面ですね。
本作、「政治」の話が進むにしたがって、その加害行為の主体者を安倍政権に絞っていきます。
加害行為をしているとする根拠としているのがジャーナリストの主張。
では、どんなジャーナリストを取り上げているかというと・・・。
<本文引用>------------
日本国内のフェイクニュースについて、具体的に見ていこう。朝日新聞記者の南彰と東京新聞記者の望月衣塑子は、安倍政権発足当初(二〇一二年一二月)からの二〇一八年五月までの首相や閣僚、与野党政治家、官僚の発言一〇〇件について事実かどうかチェック(ファクトチェック)し、○(正)、×(誤)、△(重要な情報が欠けている、誇張が含まれる)に分類している。六六件が×、二九件で△、○は五件しかない。(本文より)
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うーん、朝日新聞記者の南彰氏に、東京新聞記者の望月衣塑子氏ですか・・・。
<本文引用>------------
SNSでは文章だけでなく画像も簡単に発信できる。ツイッターでも写真や動画など画像付きのコメントが送信される頻度は非常に高い。
精神科医で評論家の香山リカは次のように、SNSでは文章よりも写真が説得力を有するのではないかと推測している。
「『沖縄・辺野古での米軍新基地建設への抗議活動をする人の大半は国外・県外の活動家』と主張する人たち」は「県外の労働組合の幟旗(のぼりはた)やハングルの横断幕が写った集会の写真を送ってきた」「『時にはそうしたことがあったとしても、日常的に座り込みをしている人の多くは沖縄県民』と資料のリンクなどを添えて返答しても、「写真が何よりの証拠」とゆずらない」。(本文より)
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うーん、精神科医で評論家の香山リカ氏ですか・・・。
朝日新聞記者の南彰氏に、東京新聞記者の望月衣塑子氏に、精神科医で評論家の香山リカ氏って、なんか、どんなテーマを出しても、なんとなく予想できるような気がするのは私だけでしょうか。
読後は、「フィルターバブル(Filter Bubble)」と「エコーチェンバー(Echo Chamber)」というキーワードを思い出しました。
◆頭の中でシンクロした他の完読作品
『この国を蝕む「神話」解体 市民目線・テクノロジー否定・テロリストの物語化・反権力』
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■読んだきっかけ:図書館
■読んで知ったこと:リスキーシフト、コーシャスシフト。
■今度読みたくなった作品:『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』ターリ・シャーロット
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なぜ人は騙されるのか-詭弁から詐欺までの心理学 (中公新書 2544) - 岡本 真一郎






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