『「反権力」は正義ですか』

賛成か反対かの二元論で失うもの。

「メディアの役割は権力の監視だ!」
そんな言葉を幾度となく聞いたことがあります。
ただ、メディアの報道を見ていると気になることがあります。
政権与党には徹底して厳しく「報道の自由」を行使し、その一方で、野党や与党を批判する団体には徹底して頑なに「報道しない自由」を行使する。
そんな印象があります。
こんな大甘に支援されている野党の言動を見ていると、とても、野党に政権を託そうという気が起きません。
「権力の監視って言ってるけど、実は側面支援しているのでは?」
そんな風に思ってしまいます。

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書名:『「反権力」は正義ですか』
著者:飯田浩司
出版:新潮社(2020.01)
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著者はニッポン放送の人気番組「ザ・ポイス そこまで言うか!」のアンカーマンで、、二〇一八年からニュース番組「飯田浩司の0K! Cozy up!」のメインパーソナリティを務めるアナウンサー。
報道番組を通じて自身が行っている取材や、番組での経験をベースに、メディアの新しい姿勢というものを提言します。


<本文引用>------------
「マスコミの使命は権力と戦うことだ」という言葉は本来、民主主義を守るために必要な倫理観によって調査報道を行うジャーナリズムの精神を体現したものと、私は理解しています。ところが、それがいつの間にか「権力と戦う自分たちの物語」にすり替わっているように見えてなりません。私は、この「椿力と戦う」という言葉が本来の精神を失ってそれ自体が目的化し、マスコミ報道から“是々非々”という姿勢を奪い、自らを闘士に据えた陶酔の物語に引きずり込んでいるようにも見えてしまうのです。周りから見れば、もはやマスコミは特別な存在ではないのに。
一般の視聴者がSNSなどを通じて、時には専門家も交えながら活発に政策論を交わすこの時代にあって、遠い目をしながら「マスコミの使命は権力と戦うこと……なんだよね……」と具体性なく言われると、気恥ずかしさすら覚えてしまいます(このことについては後でまた触れます)。(本文より)
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確かに、ただ権力に喧嘩吹っ掛けるのが目的化しているような印象がありますね。

個人的には、「文句ばっかいうのに必ず飲み会に来るような同僚」と重なります。
「そんなに嫌なら来るなよ・・・(亡命してくれよ・・・)」って言いたくなります。


著者は取材を通じ、賛成でも反対でもない中間層、それも大多数の中間層の存在に触れます。

<本文引用>------------
二元論を入り口にニュースを二つに切り分けていくと、部外者でも全体を分かった気になることができます。しかし、そこには切り捨てられた現場の声があるのです。
「どちらでもない」という声はニュースでは扱われづらい傾向があります。白黒はっきりさせるのが報道だ、という考え方が根底にあるのかもしれません。しかし、社会の問題であろうと、人生の問題であろうと、そう簡単に割り切れるものではないのではないでしょうか。「どちらでもない」人の存在や、その苦悩を伝えることもまたメディアの役目のはずです。(本文より)
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以前読んだ内藤陽介氏の『イスラムはなぜアメリカを憎むのか』。
第二次世界大戦後の米ソ対立は、「親米でなければ反米で親ソ、親ソでなければ反ソで親米」という、「親米でも親ソでもない」スタンスを許さない世界情勢だと指摘していました。
それと重なりました


著者は
「正しい情報に基づいて是々非々に臨む」
というスタンスを貫いています。

例えば、集団的自衛権と平和安全法制。
そういえば、国会議員の中には、「可決されたら亡命する!」と宣言していた人もいます。(その人、いまだに亡命していませんが・・・)
メディアの基本姿勢は平和安全法制には徹底反対。
「戦争法案」などというレッテルを貼って報道していました。
しかし、「ザ・ポイス そこまで言うか!」はそういった流れとは一線を画した放送を行います。

<本文引用>------------
一方、集団的自衛権で自国を防衛している国々の大部分はすでに徴兵制を廃止していたり停止しています。NAT0加盟国のフランスのように、集団的自衛権を認める国でも一部に徴兵制復活論はありますが、これは国防上必要というよりも、国防のコストを国民に明確にするという意味での徴兵制活用論であって論点の全く異なるものです。
番組では平和安全法制について、現実の法案としては野党やマスコミからの批判を受けて大幅に骨抜きにしてしまったためにあまり意味がないという、専門家の観点からの批判も紹介しました。
すなわち、この法律が成立したとしても集団的自衛権の発動にはかなり歯止めがかけられているし、現場の自衛官が違法か合法かをその場で判断するという根本は変わらず、結局のところ負担は現場に行ってしまうという現実は変わらないと批判したのです。(本文より)
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すると、どうなったか。
抗議電話が殺到したそうです。

<本文引用>------------
この当時、生放送スタジオには批判の電話が多くかかってきました。「ザ・ポイスは安倍政権を擁護している!」「戦争法を推進するのか!」「お前は子供を戦争に行かせたいのか! 徴兵制反対!」など。一度「戦争法」というイメージがついてしまうと、論理的に説明を尽くしても通じない。根拠を示しても難しい。「理」よりも「情」が優先してしまうのかと、正直暗澹たる気持ちになったこともありました。
当時、この平和安全法制によって集団的自衛権が行使される事態の想定として例示されていたのが、中東ホルムズ海峡が封鎖されるような事態です。ここを通って日本にやってくる原油は全体の8割を超え、いかに備蓄があるとはいえ完全に止められてしまえば国民生活に重大な影響が出る「重要影響事態」となります。
それゆえ、たとえば アメリカ軍が多国籍軍でこの海域の警戒監視活動をするとなれば日本の自衛隊も参加できるようにするのだということでした。
あれから3年あまりが経ち、イランとアメリカの関係がギクシャクするに至って当時想定された事態になりつつあります。
しかしながら、当時想定されたようにアメリカ軍に引っ張られて無理矢理に自衛隊が参加するような事態になっているでしょうか? 少なくともこの原稿を執筆している2019年10月半ばの時点ではそうした事態に至っていません。(本文より)
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出ました「お前は子供を戦争に行かせたいのか!」。

安全保障の重要性を主張すると、反対派から繰り出される指摘の一つが
「じゃあ、あなたは自分の子どもが戦地に行くのに賛成なんですね?」
とか
「自分の子どもが他国の人を殺すことを許すんですね?」
といったもの。

災害救助をはじめ、既に自衛隊にさんざんおんぶに抱っこされている状態で、いまさら何を言っているんだと思います。


一方、2019年10月に日本海の大和堆で水産庁の漁業取締船と北朝鮮の大型漁船が衝突した事件。
漁船は沈没し、乗組員は別の北朝鮮の漁船に乗り移るという映像はなかなか衝撃的でした。

<本文引用>------------
2019年10月、日本海の大和堆で水産庁の漁業取締船と北朝鮮の大型漁船が衝突し、漁船が沈没したという事案が発生しました。
現場は日本の排他的経済水域(EEZ)で、北朝鮮の漁船に対してEEZ内から出ていくように促し、放水を開始した直後の出来事だったようです。海に投げ出された北朝鮮船の乗組員の人は、全員が救助され別の北朝鮮船に引き渡されました。これに対し、「どうして漁民を拘束せずに北朝鮮側に引き渡したのだ」「全員逮捕して聴取すべし」という非難の声が与党議員や一部マスコミからも上がりました。
私もこの事件の一報を聞いたときにそう思いました。
「情報の宝庫じゃないか! なぜみすみす逃すようなことをするのだ?」(本文より)
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そこで、著者は取材を進めます。

<本文引用>------------
そんな思いを抱えながら、関係者を取材し、国内外の法律や条約をよく読んでみると考えが変わっていきました。というのも、現場は領海ではなく排他的経済水域、EEZです。EEZは、国家の主権を最大限発揮できる領海と、主権ではなく国際法に基づく公海の中間にあります。基本的には公海なのですが、一部の主権に限って沿岸国の行使が認められるという、国際法的にはややこしい海域なのです。
その根拠とされるのが、国連海洋法条約。それによれば、航行の自由はEEZといえども公海と同じく保証されます。つまり、たとえ国籍がわからない不審な船であっても、EEZ内にいるというだけでは違法とは言えないわけです。
一方で漁業に関しては経済活動ですから、EEZ内では主権が主張できます。日本側に無許可で漁業活動をしていた場合には取り締まることが可能です。
ですが、それには漁業をやっていた動かぬ証拠が必要となります。これが難しい。
もちろん、北方領土周辺海域におけるかつてのソ連のように船に立入検査をして、少しでも漁具とおばしきものを発見すれば即拿捕というような荒っぽい行政機関もありますが、日本はそこまではしません。きちんとした証拠に基づかない限りおいそれとは動けないのです。実際、今回の事案で水産庁は「違法に漁獲しているとは確認できなかった」としています。この違法操業が認定できなければ、船を当ててきたという内容の公務執行妨害も成立しづらくなります。
違法行為→摘発→抵抗・阻止→公務執行妨害というのが公務執行妨害成立までの流れですから、その大元が揺らげば全体が崩れてしまうわけです。
その上、北朝鮮は明確には自国のEEZの範囲を規定していません。国連海洋法条約に署名はしていますが批准はしていないという中途半端な存在なのです。
EEZについても、国連海洋法条約や条約に沿う形で作られた我が国の国内法では、沿岸国同士のEEZが重なる場合は、お互いの主張するEEZの中間線を境とするようになっています。日本はそう主張しているのですが、北朝鮮は大和堆そのものを自国のEEZと主張しています。そして二国間で協議を行うような環境でもないのはご存知の通りです。(本文より)
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「EEZラインに〇〇国に船が入った!」なんて記事を見ていると、なんか、EEZと領海が同じような印象を持ってしまいますが、名前が違う以上、当然、内容は違うわけです。

そこから照らして見直すと、水産庁の取った行為が国際法に照らしても、その時に現実に取れる対応に照らしても、結構、現実的な政策に思えてきました。


アナウンサーが発表する本の多くは「しゃべり」に関するものが多いです。

そんな作品とは全く異なり、むしろ、従来の「権力と対峙するのがメディア」という従来の「“メディア”こうあるべき論」に対し、「新・“メディア”こうあるべき論」を投げかける内容となっています。


PS
最近(2021年5月)、朝日新聞のある新聞記者が「新聞記者やめます あと●●日」なんていうメッセージをSNSを中心に発信しています。
一部の大手企業に残っていた終身雇用という言葉すら死語になりつつあり、他社への転職、独立のための退職がもはや珍しくもなんともない昨今。
自身の新聞社退職がさもニュースであるかのようなこのメッセージ。
「新聞記者」と言うのは、私のような「サラリーマン」ではなく、「特別に崇高な職業」と思っているのかなあと思ってしまいました。
ちょっと、この自己陶酔ぶりには驚かされます。
ちなみに朝日新聞が2021年5月26日に発表した決算。

純損益は1879年創業以来最大の赤字額である441億円の赤字。
同社はネットやコロナの影響だとしている。
そうかなあ。
正直、この程度の取材力と分析力に気が付いて、お金払ってまで入手する情報とは思われなくなったので、買われなくなっただけでは?
そんな風に思いました。


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■読んだきっかけ:ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」
■読んで知ったこと:賛成か反対かの二元論で失うもの。
■今度読みたくなった作品:『世界のニュースを日本人は何も知らない』谷本真由美
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