『一流家電メーカー「特殊対応」社員の告白』

ハードディスクの回転数は1分間に5400回以上。

1990年に銀行員として社会人スタートした私。
けっこう、顧客対応で悩むことがありました。
一番悩ましいのは、融資先への督促。
引落日に口座にお金が入っていないわけですから、こちらに非はありません。
それでも、「あのう、大変申し訳ござません。〇〇銀行融資課の後田と申します。本日お引きをさせていただく予定の金額〇〇円がお口座に・・・」なんてやるわけです。
で、言い方を間違えると途端にクレームとなり、時には副支店長あたりを巻き込んだ騒動に発展します。
そんなある日、書店でクレーム対応マニュアルなるものを見つけました。
「顧客の言い分を聞きなさい」「傾聴の姿勢でのぞみなさい」
でも、「なんで、延滞した相手の方が悪いのに、こちらの言い方が悪いなどと怒られなきゃならないんだ!そんな相手になんで傾聴?」そんな風に思いました。

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書名:『一流家電メーカー「特殊対応」社員の告白』
著者:笹島健治
出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン(2017.11)
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著者は大手電機メーカーに20年勤務し、主にパソコン事業で「特殊対応」してきたお方。
本作では、「特殊対応」で対応してきた出来事を紹介しながら、読者に対し、「人はどう働くべきか」を考えるきっかけを提供しようとします。


「特殊対応」とは、著者の所属する大手電機メーカーの製品を使っている重要な顧客への対応を指しています。
なんで「特殊対応」が必要になるのか?

<本文引用>------------
同じ大型医療機器を製造販売している国内ライバル企業や海外医療機器メーカーなどと厳しいお客様の取りあいを日々繰り広げている分野なので、大手のK病院のご機嫌を損ねるわけにはいかないのでした。
しかし、「要求どおりに対応し、ファイルを救出せよ」とは、言うは易しですが、トラブルの内容によっては物理的に不可能な場合もあるのは、パソコンに多少でも詳しい方ならわかると思います。 ところが、A社はパソコン事業を営んでいる企業であるにもかかわらず、経営幹部はパソコンの技術的なアレコレなんてほとんど理解していません。 そのため、このような指令では、技術的に可能/不可能かがわからないことでも平気で安請けあいすることがあるのです。(本文より)
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「特殊対応」しなければならない顧客、「特殊対応」を命じる人たち。
まあ、どの会社も同じなんですね。

<本文引用>------------
「てめぇ!仕事中にバッテリが切れたら使い物にならねぇじゃねぇか!」と叫びながら、順番に並んでいただくようご案内しようとした私に向かってCompunoteをカまかせに、投げつけたのです。
もともと運動神経の鈍い私は、「パーフェクトなご案内の体勢」のまま顔面で受け止めてしまい、私の鼻血でお客様のパソコンは血だらけになってしまいました。
順番待ちをしていたお客様たちも、軽いパニック状態になってしまい、代わりのスタッフが駆けつけて来たことで私の出番は終了しました。
別のスタッフがおうかがいしたところ、このお客様は、昨日から出張で大阪に来ていたのですが、ACアダプタを忘れてきたそうで、肝心の商談のときにバッテリ切れになることに気がつかなかったそうです。 結局、お客様はショールームでフル充電して帰られました。
鼻が大きく腫れあがって、激痛も怒りも収まらない私は病院に行くことになりました。 サポートセンターは、さまざまな方たちがそれぞれの感情や疑問をぶつける場でもあるのですが、パソコンをぶつけるのだけはやめてほしいものです。(本文より)
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店員に怪我までさせておいて「・・・結局、お客様はショールームでフル充電して帰られました。」って書いてます。
うーん、でも、このエピソード、ホントかなあ?と思ってしまいます。

他人に怪我をさせても、何の罪を問われることなく、自分のPCの充電をして平然と帰ることが出来る、販売する側と、買う側の関係。
もしこの話が本当だとしたら、こういう諸先輩たちの顧客対応が、現在に続く、「モンスタークレーマー」を生み出したのでは?と思ってしまいます。

<本文引用>------------
しかし、私が特殊対応の業務に就き、さまざまな経験を乗り越えて、やがて退職し、いま思うのは――「理不尽なことには声をあげるべきだ」「もうダメだ、死ぬしかないなんてことは ない、逃げだせばいいんだ」ということです。これは、特殊対応にあたっていた当時の私自身に、そして私の先輩や同僚たちに、もっとも伝えたかったことでもあります。
本書は、糾弾本や暴露本ではありません。本書を「人はどう働くべきかを考える本」だと受け取っていただければ、著者として、とてもうれしく思います。(本文より)
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こんな風に締めくくっていますが、なんか「自分は逃げずにやってきた。でも、皆さんは逃げてください。逃げてもいいんです。」と言われている気がします。


私が銀行員になったのは1990年。

世間ではバブル崩壊の影響がチラホラ出始めていました。
散々バルブで乱脈融資をやった先輩と居酒屋で飲んだとき、バブル武勇伝を騙り切った最後に、
「なあ、後田、お前たちは俺たちみたいには、なるなよ!」
って言われた時、
「ふざけんな!どれだけ、俺たちが後ろ向きな業務ばかりやらされてると思ってんだ!」
と言い返したくなった頃のことを思い出してしまいました。

著者が読者に伝えたいと言っていることと、実際に書かれていることに、なんとも違和感を感じてしまう、一冊でした。


正直、とんでもない顧客対応のエピソードのオンパレードですが、ITに関するわかりやすい解説も掲載されています。

<本文引用>------------
そして、その高速で回転しているプラッタに記録されているファイルを読み書きするために、スイングアームの先端に取りつけられた「磁気ヘッド」がプラッタに接触することなく、髪の毛1本分ほど浮いている状態でファイルの読み書きを行うのです。
パソコンの電源を入れると、Windows起動時にカリカリと軽快な音が聞こえることがありますが、これはハードディスクが内部で読み書きしているときの音なのです。さて、このプラッタとよばれる円盤がどのくらいの速さで回転しているかというと、ハードディスクにもよりますが、1分間に5400回あるいは7200回というスピードで回転しており、なかには1万4000回という高速なタイプのものもあります。
ちなみに、家庭用のドラム式洗濯機に搭載されているドラムを回すためのモーターは、脱水時にもっとも高速に回転しますが、それでも約1500~1600回転です。いかにハードディスクのプラッタが高速回転しているのかが、イメージできるのではないでしょうか。
性能としては、プラッタの回転数が速ければ速いほど、データの読み書きの速度は上がるのですが、デメリットもあります。回転が高速になればなるほど、一般的にモーターの回る音や振動も大きくなり、消費電力も大きくなるため、発熱もそのぶん大きくなります。とくにモバイルパソコンの場合、消費電力が大きくなると、バッテリ駆動時間が短くなるなどのデメリットとなります。(本文より)
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洗濯機の回転数が1分間に1500~1600回転なんて、初めて知りました。
ハードディスクの回転速度がとてもよくイメージできます。


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■読んだきっかけ:Amazon
■読んで知ったこと:ハードディスクの回転数は1分間に5400回以上。
■今度読みたくなった作品:『謝罪の作法』増沢隆太
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