『ホワイト・トラッシュ ―アメリカ低層白人の四百年史』

アメリカ大陸発見以降、ヨーロッパはアメリカ大陸にどういった人たちを送り込んでいたのか。

俳優の柴田恭兵さん。
「俺たちは天使だ!(1979年)」のダーツ役、1981年の「プロハンター」の五島達役、「あぶない刑事(1986年)」の大下勇次役。
どれも少年が憧れてしまうかっこよさです。(個人的には大河ドラマ「軍師官兵衛(2014年)」での官兵衛のお父さん黒田職隆役が一番好きですが)
そんな柴田恭兵さんが1988年にリリースしたシングルCDが「TRASH」。
レンタルCDショップで借りてから、「TRASHってどんな意味だろう」と辞書を引きました。
「TRASH」という英単語との最初の出会いでした。

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書名:『ホワイト・トラッシュ ―アメリカ低層白人の四百年史』
著者:ナンシー・アイゼンバーグ
出版:東洋書林(2018.10)
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著者はルイジアナ州立大学歴史学部教授である歴史学者。
アメリカに建国以来ずっど根付いている“白人貧困層”を明らかにします。


本作冒頭で著者は主張します。

<本文引用>------------
機会の平等を重んじる文化が、そこに身を置きながらも執拗に軽んじられている人々のありようをどう説明すのか? いや、そればかりか彼らをどう受け入れるのか? 21世紀のアメリカ人は、この恒久的な難題に立ち向かわなければならない。底辺層(アンダークラス)の存在を認めよう。最初のヨーロッパ人入植者があの岸辺に辿り着いたときからともにあり続けているそれは、今日の厖大な全国的人口動態のつまらない一部などではない。ホワイト・トラッシュがこうした緊張をどう体現したのかというパズルは、ひとつには本書があえて解こうと試みる根源的な謎かけとなる。(本文より)
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「最初のヨーロッパ人入植者があの岸辺に辿り着いたときからともにあり続けている」

ウォール街をデモする多種多様な人種とは違う、白人貧困層というものを知りました。


メイフラワー号に乗ってピューリタンが降り立ったアメリカ大陸。

<本文引用>------------
ピューリタン社会にあって、「ジェントルマン」という敬称は貴族の血統の男子に通常適用されるが、教会で傑出した位置づけを得た富裕商も同様にそう呼ばれ、教養を積んだ専門家、聖職者や彼らの妻は「マスター」、「 ミスター」や「ミストレス」、土地は所有するが行政官や聖職者などの有力な立場にない、“誉むべき農場経営者(ハズバンドマン)”は「グッドマン」と呼ばれて敬われており、ニューイングランド人がこうした敬称を厳密に使ったわけではないが、間違いなく意識はしていたようである。結局、彼らが従う行政府は、土地を持つエリートが官省を牛耳るイングランドの寡頭制を模倣していたのだから。(本文より)
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自分たちはイギリスでは決して「上の階級」ではなかったようですが、じゃあ、新大陸で「階級」のない社会を作ろうとするかと言えば、そうではないようです。
また「階級」を作るんですね。

そして、生活件が整っていく上で、いろんな仕事が必要になってきます。
いわゆる3Kと呼ばれるようなお仕事だって必要になります。

<本文引用>------------
とはいえ、当のピューリタンのエリートが依存していたのは下賤な労働カだった。その序列の上位は徒弟と相続された使用人、下位がヴァージニアのくだりで見た強制労働に就かされる債務者、犯罪者である。適例として、ウィンスロップの統括による、窃盗で訴えられた男の1633年の公判が挙げられる。有罪判決が下った後、男の土地は売却され、その収益が被害者救済に充てられた。男は3年、娘が付け足しの縁故者として14年の奉公をそれぞれ言い渡された。これで通常の流れなのである。(本文より)
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本作を読んでいると、ヨーロッパは「棄民政策」を取っていたようです。
犯罪者や、税金を取れる見込みのない人、そんな人をどんどんアメリカ大陸に送り込んでいた実情がうかがえます。


やがて、独立戦争。
無事独立したらどうなったのかと言えば、階級はしっかり残ります。

<本文引用>------------
アメリカ独立革命の余波の中、ジェファーソンには擁護すべき多くのものがあった。終戦を告げる鐘が打ち鳴らされると、戦後の不景気が広範囲にわたる苦しみをつくり出す。国の得た重い負債によって立法府が踏みきった空前の増税は、戦前比で3倍から4倍という高額に達するときもあり、こうして集めたドル立ての税金の大半にしても、結局のところ戦費をまかなうために発行されていた州政府証券を買った相場師の手に流れた。一方では多くの兵士が、報奨としての土地とその所有証書を額面のほんの一部で手放すまでに追いつめられていた。富は上向きに、つまり貧農や兵士の穴だらけのポケットから戦時相場師や債権者といった新興成金――「資本家」という新階級――の膨れた財布に、ひたすら移動するばかりだった。(本文より)
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なんか、ますます、格差が広がってしまったようです。
北軍であるアメリカ合衆国と、「アメリカ連合国」を称した南軍の戦い。
北軍である大統領リーンカーンは奴隷解放宣言で有名です。
それに対抗しているわけですから、南軍「アメリカ連合国」には人種差別を擁護しているイメージがあります。

そんな、両軍ですが、プロパガンダでは、どちらも白人貧困層を取り上げます。

<本文引用>------------
しかしそれは、両陣営の政治的想像力をとらえて離さなかった戦中プロパガンダの「悪臭を放つ土台(マッドシル)」なのだ。「どん底の連中(マッドシル)」は、連合国民による連邦国民への中傷語の数々へと迎えられた。浮浪者(ヴァガボンド)、靴磨き(ブートブラック)、北部の浮きかす(スカム)、そしてこうした選択にあって忘れてはいけないジェファーソン・デイヴィスの侮蔑語「地球の汚物(オフスカウアリング・オヴ・ジ・アース)」が
それで、こうした語彙の採用がリンカンの年季奉公人や下層の雇われ人という北軍兵のイメージを反逆者に結ばせたのだ。容易い勝利を自ら確信するため、連合国はこう言い立てる。北軍はどいつもこいつもどた靴野郎や汚れた農夫と一緒に連邦の内側から運ばれてきた連中で、ヨーロッパの「クズ(トラッシュ)」、北の町の監獄や裏路地から流されてきたがらくたで一杯だ。一方
、北部人は北部人でパン暴動、脱走兵、プア・ホワそして逃亡奴隷といった諸々を連合国分解の動かぬ証拠と理解していた。北部にしろ南部にしろ、階級を敵方の弱みの核心、そして軍事上、政治上の弱点の大元と見なしていたのである。(本文より)
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両陣営も「白人貧困層」の問題を解決するような提案ではなく、煽っていたような印象です。


本作では、アメリカ独立のジェファーソン大統領からオバマ大統領まで、まざまな大統領が取り上げられ、彼らが「白人貧困層」にどう対応していたかを解説しています。
でも、トランプ大統領の名前は出てきません。
それを、訳者である渡辺将人氏は解説してくれます。

<本文引用>------------
本書はドナルド・トランプが大統領選挙に勝利する直前の2016年夏に刊行されたため、トランプ支持の白人労働者層についての解説書であることを期待され、それが突如として「話題の本」となった背景にあることは否めない。だが、他方で内容と執筆の分量、著者の先行業績からも一目瞭然だが、トランプ台頭とは無関係に遥か前から温められていた課題でもあった。それが結果として絶妙な共時性を伴って世に出た経緯は興味深い。すなわち、初期アメリカの建国者に精通した歴史家が、その延長で取り組んだアメリカ階級論である。したがって、自動車や鉄鋼、炭などの産業の衰退で白人労働者を苦しめるグローバリゼーション、あるいはレーガン政権以降の共和党の富裕層優遇策を糾弾するアメリカ民主党の党派的解釈などを直接的に扱う議論ではない。著者アイゼンバーグの狙いは、白人下層の存在を歴史的底流として1本の線で描き切ることにある。(本文より)
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著者は「良い(悪い)を評価する」ではなく、「まずは事実として正しく認識する」というスタンスで、本作を一気に書き上げているような印象を持ちました。


◆頭の中でシンクロした過去の完読作品

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■読んだきっかけ:Amazon
■読んで知ったこと:アメリカ大陸発見以降、ヨーロッパはアメリカ大陸にどういった人たちを送り込んでいたのか。
■今度読みたくなった作品:『記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂』金成隆一
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