『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』

初期マクドナルドにおけるフライドポテトへのこだわり。

小学校の頃、マクドナルドは静岡市に1店舗(たぶん)。
「マックフライポテト」をはじめて食べた時は感激しました。
Lサイズが入っていた赤い紙の容器をしっかり家に持ち帰りました。
で、「あの味をもう一度」とばかりに、ジャガイモを細く切って、油でフライ。
でも、残念なことに、「俺だけマックフライポテト」は、本物にはほど遠く、カリッとした出来上がりではなく、なんとも情けなくシナっとした出来上がりでした。

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書名:『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』
著者:レイ・A・クロック、ロバート・アンダーソン
出版:プレジデント社(2007.01)
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著者は「現在」のマクドナルドの創業者。
自身がビジネスを始めてから、どんな経緯でマクドナルドを創業し、発展させてきたのかを語っています。


「現在」のマクドナルドの創業者。
あえて、「現在」をつけたのには理由があります。

マクドナルドはもともとは、マクドナルド兄弟が始めたハンバーガーショップ。
そのマクドナルド兄弟にフランチャイズ化を提案したのが本作の著者であるレイ・A・クロックです。
お店としてのマクドナルドを創業したのはマクドナルド兄弟、マクドナルドコーポレーションを創業したのがレイ・A・クロックというわけです。

しかし、レイ・A・クロック氏。
ほんとに、よく働きます。
2017年現在、巷では「働き方改革」なんて言葉が流行り、「たくさん働く人=悪」のイメージが漂う昨今では、「ブラック!」なんて言われてしまいそうです。
もっとも、レイ氏は経営者。
働かされているのではなく、自ら働いているわけですが・・・。

マルチミキサーを販売をしていたレイ氏。
注文が入るたびに聞かされる「マクドナルド兄弟が使っているミキサーが欲しい」という言葉。
レイ氏はマクドナルド兄弟に会いに行きます。

そして、まず、お店の運営に衝撃を受けます。
そして、兄弟に会い、フランチャイズ化を提案します。

<本文引用>------------
彼の言葉は、私の意表を突くものだったので、気が動転し、一瞬言葉を失ってしまった。どうにか落ち着きを取り戻し、この方向で話を進めても無駄だと悟った。そこで、誰かほかの人を雇えば、働かずに収入が入ってくると説明した。このときはまだ、マルチミキサーを売るという考えに固執していた。
するとディックが反対した。
「それは、多くの問題を背負い込むことになる。誰が我々のためにそんな仕事を引き受けてくれる?」
突如、強い思いが込み上げてきた。そこで私はぐっと身を乗り出して言った。
「では、私がやりましょう!!」(本文より)
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フランチャイズに消極的だったマクドナルド兄弟に対し、レイ氏は働きかけ、ついに合意をとりつけます。
このへんを読んでいるとマクドナルド兄弟の根っこにあるのは「調理人」、レイ氏の根っこにあるのは「商売人」。
そんな気がします。

じゃあ、レイ氏はまったく調理をしないかといえば、そうでもありません。
レイ氏はマクドナルドの商品として、フライドポテトを挙げています。
当時は刺身のつまのイメージが強かったフライドポテトに、マクドナルド兄弟はこだわっており、その味に、レイ氏も惚れ込み、フランチャイズ化した店で、その再現に奮闘します。

再現できなければ、フランチャイズ化は失敗です。

<本文引用>------------
それ以上に悩まされたのはフライドポテトだ。一向にうまく揚がらない。私はエドに、自信たっぷりにマクドナルド製法のフライドポテトを説明していた。まずジャガイモの皮はできるだけ薄く剥く。少し皮を残した状態にすれば、風味が逃げない。次に、シンクに冷水を張って、その中にポテトを入れる。袖を肘までまくり上げ、外科医が手術するときのように手を消毒し、水がでんぷんで白く濁るまで両腕でゆっくりとかき回す。排水後は、もう一度ポテトをよくすすぎ、水気を十分に切ってからフライバスケットに入れる。新鮮な油でこんがり揚げれば、美しいきつね色のフライドポテトの出来上がり……。
……そのはずが、出来上がったものは想像とはおよそ懸け離れていた。何を間違えたのだろうか。調理工程を見直してみたが、間違いは見つからない。サンバーナーディノの店でマクドナルド兄弟が行っていた手法を頭に叩き込んでいたのだから、間違いはないはずだ。もう一度やってみた。結果は同じだった。私が求めているポテト、カリフォルニアで味わったあの素晴らしいフライドポテトではなかった。マクドナルド兄弟に電話で聞いてみたが、彼らにも原因はわからなかった。
耐え難き事態だった。あのマクドナルドの最高の味の品質をそのまま数百店でも可能にするという私の夢は、初めの一歩でつまずいたのである。(本文より)
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この辺を読んでいると、スーツを着こなす「商売人」が調理場で悪戦苦闘する光景が思い浮かび、微笑ましくなってしまいます。


ただ、中盤からはレイ氏からマクドナルド兄弟への発言は厳しくなります。
会社を大きくするためには、「商売人」というセンスが必要なんだなあと思います。

<本文引用>------------
我々はマクドナルドを名前以上の存在にしたかった。マクドナルドを、安定した品質と、運営が標準化された、レストランのシステムの代名詞としたかったのだ。特定の店舗やフランチャイズオーナーのクオリティによって顧客を増やすのではなく、どの店に行っても同じサービスが受けられるというように、マクドナルドのシステム自体に対するリピーターをつくりたかった。そのためには徹底的な教育と、施設の見直し、運営への評価などが必要であり、さらに日夜の研究開発が必要だった。これらを実現するためには、どのような調理技術を各店舗に指導するかが鍵となった。彼らが思いもつかない、あっと唸らせる画期的な方法を、我々が構築しなければならない。
さらに、当時のフランチャイズ大手、テイスティフリーズやデイリークイーンという、当時、アメリカで二強といわれたフランチャイズ最大手の実例と、カリフォルニアの店舗の実績から、マクドナルドが進むべき具体的な道とは「店舗を自分たちの手で造る」ということだとわかった。店舗開発を自ら行うことにより、自分で土地を選ぶことができ、店舗を戦略的に点在させることができ、全米規模での市場調査もできるようになる。(本文より)
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今の巨大企業マクドナルドを作り上げたのはレイ氏の「商売人」としてのセンスにあるのは間違いないと思います。


でも、マクドナルドを作り上げたと言えるのか?
会社には「創業」を神格化している会社が少なくありません。
「創業の精神」「創業の魂」
これを言われると、何も言い返せない凄みがあります。

でも、数多くの企業の盛衰を見ると「創業からのしきたりやしがらみ」が原因になっているケースも多いように思います。
でも本当の「創業」って何?
読み終えた後、そんな風に思ってしまいました。

ちなみに、本作は翻訳もの。
原題は『GRINDING IT OUT』。
直訳すると『それを粉砕する』。

でも、邦題にある「成功はゴミ箱の中に」。

「ライバル会社にスパイを送り込んでみたら?」に対するレイ氏の考え方を紹介する部分。

<本文引用>------------
だが、競争相手にスパイを送り込むべきだと真剣に言う人間もいた。信じられるだろうか。ドナルド・マクドナルドがスパイだったなんて!そんなばかげた考えに対する私の回答はこうだ。
「競争相手のすべてを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。知りたいものは全部転がっている」
私が深夜二時に競争相手のゴミ箱を漁って、前日に肉を何箱、パンをどれだけ消費したのか調べたことは一度や二度ではない。
私は競争相手と正々堂々と戦う。強みを鍛え、品質、サービス、清潔さ、そして付加価値に力を入れれば、我々についてくることができずに競争相手は消滅していくだろう。(本文より)
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スパイはだめだが、ゴミ箱漁りはOK。
面白い道徳観です。

先日、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』という映画を見ました。
本作がベースになっています。

ただ、映画では、レイ・A・クロックは、本職のセールスがうまくいっていない、でも、山っ気のあるセールスマンとして描かれていました。
主演は初代バットマンのマイケル・キートンで、彼がレイ・A・クロックを演じていました。
ただ、映画でのレイは、かなり貪欲に強引にマクドナルド兄弟から実質の経営権を奪ったように描かれていました。


◆頭の中でシンクロした他の完読作品
『RPA革命の衝撃』

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■読んだきっかけ:『マクドナルド化する社会』ジョージ・リッツア
■読んで知ったこと:初期マクドナルドにおけるフライドポテトへのこだわり。
■今度読みたくなった作品:『私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ』サム・ウォルトン
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