売掛金と在庫の滞留が会計にもたらす影響。
以前勤務していた会社の隣の課の課長は典型的な「脳筋人間」。
朝はめちゃくちゃ早く、普段から怒鳴り声で、部下に指導する内容には決まって「死ぬ気で」は入るような男でした。
ある時、その課で大きな売掛金未回収が発生。
少しは大人しくなるかと思いきや、さっそく部下に大号令。
「お前らわかってんのか! 貸倒なんで、お前たちが倍受注を取ればいいんだ! 死ぬ気でやれ!」
隣の課の私は「売上を倍にしても貸倒損失がとても解消できないのに・・・」と思いながら聞いていました。
心の底から、こういう課長の部下でなくてよかったと思いました。
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書名:『会計がわからない課長はいらない』
著者:木村俊治(著)
出版:クロスメディア・パブリッシング(インプレス)(2014.05)
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著者は公認会計士でコンサルティング会社経営。
企業会計のチェックポイントを解説します。
貸倒れ。
売掛金が回収できなくなった状態をいいます。
<本文引用>------------
損益計算書の「販管費」のところに250万円の貸倒損失という費用が計上されて、営業利益は一気に225万円の赤字となってしまいます。
この損失を取り戻すには、いったいどれくらいの売上を立てればいいのでしょうか? 具体的に計算してみましょう。
1個当たりの仕入値は1,800円、売価は2,000円です。ですから、1個売ると200円の売上利益がでます。このとき、利益が売上高に占める割合である、売上総利益率は、
売上総利益 ÷ 売上高 = 売上総利益率
で求められますから、当てはめると次のようになります。
200円 ÷ 2000円 = 0.1
これはつまり、商品を売れば売るほど売上高の1割が利益になるということです。
さて、ではこのケースで250万円の貸倒損失に相当する利益を取り返すには、どれくらい売り上げる必要があるのでしょうか? 計算は小学生でもできる逆算です。今度は売上高を求めるので、先ほどの式を次のように変形します。
売上総利益 ÷ 売上高 = 売上総利益率
↓
売上高 = 売上総利益 ÷ 売上総利益率
= 250万円 ÷ 0.1
= 2,500万円
貸倒金額250万円を取り返すには、その10倍の額の2500万円の売上が必要になります。冒頭のエピソードで経理部長が「貸し倒れでもしたら、売掛金の10倍近い売上が必要だぞ」と指摘していたのは、このことだったのです。(本文より)
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では、貸倒れがなく、売掛金のままならいいのかと言えば、どうもそうではないようです。
<本文引用>------------
実はこの「売掛金」を会社が持つと、費用が生じることをご存知でしょうか?
会計上、決算期に保有している「売掛金」などの売上債権に対して、その売上債権が本当にその金額の価値があるのかを見積もることが求められています。それぞれの売掛金について回収の見込みを検討して、回収が見込めない金額については、事前に貸し倒れを見込んで費用を計上しようというものです。
金額が大きく、回収の可能性が高い債権は、個々に見ますが、特に問題がないような通常の売上債権に関しても、「貸倒実績率」というものを用いて「貸倒見込金額」を算定し、費用を計上します。
これは、通常の債権のなかでも、過去にいくらかは貸し倒れが生じたことがあるでしょうから、過去の貸倒実績率(あるときの債権合計金額100として、その債権のうち1が貸し倒れが生じた場合、1÷100=0.01が貸倒実績率)を用いて、費用を見込んでおくという会計のルールに基づいています。
例えば、250万円の売上債権に対して、貸倒実績率が0.01の場合、貸倒見込金額は25,000円(売上債権250万円×貸倒実績率0.01)となります。これは費用として計上され、利益がその分減少することになります。(本文より)
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売掛金同様、在庫にも注意がいるようです。
<本文引用>------------
・商品が古くなり価値が下がる
・販売先からの需要がなくなり、仕入れてもらえなくなる
などというように、予定していた価格で予定していた量を販売できなくなります。いくら途中経過で利益がでていても、仕入れた在庫が順調に売れていないと実質的にはお金が儲からない状態になるのです。
在庫としてある間は、その在庫に相当するお金は他に使えないことになります。在庫としてお金が固定化されなければ、そのお金を使って別の商品を買い、稼ぐことができるかもしれませんが、それができなくなります。
もし、会社の資金繰りが厳しかったらどうなるでしょう? 商品は在庫として倉庫にあっても、その商品では給料も払えませんし、モノを買ったり、広告をだしたりすることはできません。金融機関からの借金も支払えません。
実は、資金繰りが苦しい会社のなかには在庫となってお金が固定化されてしまっているパターンが非常に多いのです。損益だけ見ると損失が大きくでているわけではないのに、倉庫に行くと商品が山のように存在しているということがあります。これこそ、損益だけを見てマネジメントをしてしまった失敗例だと思います。(本文より)
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本作では、会計の知識が乏しい社員が、会計の知識が豊富な先輩にアドバイスを得ながら知識を蓄えていくプロセスがわかりやすく描かれています。
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■読んだきっかけ:Amazon
■読んで知ったこと:売掛金と在庫の滞留が会計にもたらす影響。
■今度読みたくなった作品:『会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方』大手町のランダムウォーカー
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