『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』

覇権国に愛され、そして、覇権国に嫌われる国。


ヘッジファンドと仕手戦。

ヘッジファンドは投資家のお金を集めて運用し、高度な投資戦略で利益を追求するファンドです。

世界中の市場で長期的な運用や短期的な取引を行い、リスク管理を行いながら多様な資産に分散投資します。

完全に合法で、金融規制の枠内で運営されます。

たまに、「それって仕手戦みたいなもの?」って聞く人がいます。

仕手戦は株式市場で特定の銘柄の価格操作を目的として行われる戦略的な売買活動です。

限られた資金で特定銘柄の価格を急激に上げ下げし、他の投資家を巻き込みます。

日本では価格操作に該当する場合、違法になる可能性があります。

こうして並べてみると、全然違いますね。


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書名:『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』

著者:齋藤ジン(著)

出版:文藝春秋(2024.12)

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著者は在ワシントンでヘッジファンド相手の投資コンサルティング会社共同経営者。

ヘッジファンドへのアドバイザーという視線から、「失われた30年」という1990年代初頭のバブル崩壊後の低迷期とこれからの日本経済を解説します。


著者はトランプ大統領のスタンスを解説します。


<本文引用>------------

ドナルド・トランプが米政界の舞台中央に現われ、ニュースや人々の話題になった頃、 日本の知人たちからよく、「トランプ支持者はいったい何を考え、何を望んでいるのか?」という質問を受けました。

私が、「アメリカの有権者の約5%が求めているのは、『既存のシステムを壊してくれ』ということです」、そう回答すると、次の質問は、「壊した後をどうするつもりなのか?」、となります。

しかし、新しいシステムはどうあるべきか、トランプ支持者の間にはコンセンサスはありません。トランプ本人を含めて明確なビジョンを持っている人はいないでしょう。ただ、トランプは天才的な嗅覚の持ち主だと思います。新自由主義が世界にもたらした富の偏在などに対するアメリカ人の鬱積した感情や、この世界観の唱える「べき論」への敵意を直感的につかんでいました。しかし、エリートたちはそれに気づかない、気づきたくない、できればこのままやっていきたいと思っている、彼はそこを見逃さなかったのです。(本文より)

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壊したことの後を考えるのではなく、壊してほしいと思っている人に応えるのが優先とは。


「失われた30年」。

この間、世界経済では、金融政策の価値観の衝突が起きていました。


それが「ビスビュー」対「フェドビュー」。

まずは「ビスビュー」。


<本文引用>------------

アベノミクス以前、日銀の金融政策運営の根底にあった世界観は、いわゆる「ビスビュー(BIS view)」と呼ばれるものでした。これは第一次世界大戦後にハイパーインフレに陥り、ナチスの戦争マシーンをファイナンスした経験と反省に基づく金融政策理論で、金融政策の目的は物価安定に限定されるべきで、その活用もミニマム(最低限)でなければならないという立場です。ECB誕生以前は、ドイツの中央銀行であるブンデスバンクの名を冠し、「ブンデスバンク・ビュー」と呼ばれていました。中央銀行理論の歴史的系譜をキチンと意識していたかどうかはともかく、日本の戦後の知識人やメディア関係者等の多くも大戦への反省から、「ビスビュー」的な世界観が正しいものであり、政府の放漫財政を許さない「厳しい」中央銀行像を一つの理想として受け入れていました。(本文より)

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では「フェドビュー」とは?


<本文引用>------------

それとは別に、理論的に完結しているもう一つの世界観は、「フェドビュー(Fed view)」と呼ばれるものです。ここで言うFedはアメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)を指しています。日本ではその頭文字をとってFRBといいますが、世界では「Fed」と呼ばれています。(本文より)

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著者がさすがヘッジファンドのアドバイザー。

「ビスビュー」対「フェドビュー」の論争には組しません。。


<本文引用>------------

従来の世界観を守りたい日銀や財務省、債券市場のアナリスト、その他の「有識者」は日本の「リフレ派」を異端扱いすることに成功しましたが、外から日本を見ていると、「日本の常識は世界の非常識」の構図でした。安倍総理がノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンやジョセフ・スティグリッツを招いていたのは、左派による反リフレ派キャンペーンへの対抗であり、アベノミクスが世界標準だ、とのカウンターPRです。

ちなみに、私は「フェドビュー」が正しいのか、「ビスビュー」が正しいのか、その価値判断をしているのではありません。ヘッジファンドが顧客である以上、この二つの世界観の激突が投資家にとって何を意味するのか、それを中心に考えます。

世界が金融積極主義を追求し、事実上の通貨切り下げ競争に走っている時、日本だけ慎重な金融政策運営を実施すれば、円高・株安によって、日本が大負けするのは明白でした。そして私は政治の世界がいつまでも日本の一人負けを許すことはない、そう考えたのです。

個人的な価値観を問われたら、「フェドビュー」と「ビスビュー」は表裏一体だと思っています。(本文より)

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ではこの間、日本経済はどういう方向に動いていたのか?


著者は「雇用を守り抜く」としています。


<本文引用>------------

ここまでは主に地政学的な観点からアメリカの日本潰しの過程を振り返りましたが、次に日本社会独自の問題点に焦点を当てたいと思います。私は日本が必ずしも「失われた30 年」と呼ばれる長期停滞に陥る必要はなかったと考えています。私が致命的であったと考えるのは、1997年の金融危機後の対応です。

あのときに日本は終身雇用制度を捨てて、失業率10%でも15%でも受け入れ、その代わりに企業を身軽にするという選択をしておけばよかったのです。企業が身軽になれば、コストカット後の成長戦略を考えるようになりますから。(本文より)

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「雇用を守り抜く」ための施策の後に何が残るのか?

正直、そんな議論があったとはとても思えません。


<本文引用>------------

いずれにせよ、戦後経済があまりに上手くいき、終身雇用が正常だというバイアスが社会に根付いてしまったために、クビを切られることが人格や人生を否定されることと同義になってしまっていたのだと思います。職を失うということは単なる経済問題でなく「社会的な恥」であり、人生の敗者であるかのように受けとめる風潮であったので、メディアや有識者による小泉・竹中批判は説得力を持ったのでしょう。

また正規雇用のポジションを維持できれば、物価上昇率がマイナスの時に定期昇給で毎年1.6%程度の賃上げがあるので、勝ち組でいることができます。新自由主義の下で他の国の経済がダイナミックに動く中、雇用を守るという社会的要請により、日本の「勝ち組」はじっと我慢をして守備に徹することになりました。これでは経済が活性化しないのは当然です。(本文より)

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20257月。

参議院選挙があります。

何人かの候補者は「これまで賃金が上がってこなかったのはだれの責任?」とばかりに、当時から政権を担っていた与党を責めます。

でも、政治も世論も雇用、とりわけ、あの時点の正規雇用を守ることを最優先するため、企業の成功などに将来の投資に削りまくていたのも事実です。


<本文引用>------------

人口動態が悪化しているからデフレになる、という議論がよくありますが、それは間違っていると思います。人口動態の見通しはその局面により、デフレ要因にもインフレ要因にもなり得ます。これは第5章でより詳しく述べますが、人口動態がデフレ圧力になるのは、将来の成長見通しを悪化させる場合です。日本は社会として雇用維持を選択し、将来の経済成長見通しを捨てたので、それに上乗せする形で人口動態がデフレ圧力になったのだと思います。(本文より)

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そんな日本ですが、著者は今後の日本対し、明るい面がることを指摘します。


<本文引用>------------

この100年から150年程度で振り返ると、日本は二度覇権国家に愛され、二度嫌われた経験があります。最初にラブコールを送ってくれたのは、20世紀初頭、当時の覇権国家であった英国です。イギリスは帝政ロシアの勢力拡大を抑えるため、東洋に同盟国を求めました。その結果、この時期の日本は、韓国を併合しても、満州に手を出しても許され、経済的に繁栄します。二度目は冷戦下、アメリカがソビエト・ロシアを封じ込めるため、日本の経済発展を助けてくれた時です。

そして今回、三度目の機会が訪れています。2024年4月の日米首脳会談でも、幅広い分野で協力していくことで合意しました。 宇宙開発から核融合、AI、量子技術、脱炭素、バイオを初めとするグリーンエネルギー、防衛装備品の共同生産……中国を意識した日米連携が今後こうした領域を中心に活発化していくことになります。(本文より)

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対中国を意識するアメリカにとって、日本はまたも重要なパートナーになるというわけです。


<本文引用>------------

国家レベルの話でいえば、日本は黒船来航の危機を活かして列強入りに成功するも、強くなりすきて覇権国家に叩かれました。米ソ冷戦で敗者復活を許されると、持ち前の勤勉さを活かしてV字回復しますが、冷戦の終結と共に再び潰されます。しかし新自由主義への信認が下落し、米中冷戦に突入すると、また覇権国に愛されるようになっています。(本文より)

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覇権国に愛され、覇権国に嫌われる。

そして、また、覇権国に覇権国に愛され、そして、覇権国に嫌われる。

そして、いま、また、覇権国に愛されようとしている。


こうした状況下、日本が進むべき道とは何か?


日本は選挙という形で、自分の意思を政治に反映させることができます。

自分で考え、そして、政党の考えを知り、投票する。


この当たり前のことの大切さを再認識させてくれました。



◆頭の中でシンクロした他の完読作品

『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』

『資源と経済の世界地図』

『中央公論2024年10月号』   

『武器化する経済 アメリカはいかにして世界経済を脅しの道具にしたのか』   

『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』 


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■読んだきっかけ:文化放送『おはよう寺ちゃん』2025.1.22の放送回。

■読んで知ったこと:覇権国に好かれ、覇権国に嫌われ、そしてまた覇権国に好かれる。

■今度読みたくなった作品:『基軸通貨ドルの落日 トランプ・ショックの本質を読み解く』中野剛志

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世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ
世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ









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