『中央公論2024年5月号』

派閥の何が悪いのか?


「閥」。

「閥」という言葉を初めて知ったのは日本史の教科書に登場した戦前の「財閥」。

おでこに「私は左翼です」と書いてあるくらい明らかな左翼がかった教師は、いかに資本家は悪く、国家権力が悪いのかを延々解説していました。

私の学校は市立の中学ですから、その教師は公務員。

「政府や資本家を散々悪だと言っておいて、自分は公務員かよ」って思いました。


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書名:『中央公論20245月号』

著者:中央公論編集部

出版:中央公論新社(2024.04

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本誌は中央公論新社が発行する月刊総合雑誌。

本号の特集は

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特集:日本に根ざす閥の研究

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です。


政治資金の問題ですっかり悪いイメージがついてしまった「派閥」。

しかし、私としては、考えが同じで、目的が異なるもの同士が集まるのは必然だと思っています。



特集「日本に根ざす閥の研究」での待鳥聡史氏(京都大学教授)と河野有理氏(法政大学教授)の対談「「私的な集団」が権力を握る意味 派閥解消で政治が改まるという幻想」。


<本文引用>------------

河野  岸田首相は派閥解消を宣言しましたが、結局のところ派閥はなくならないだろうと思うんです。短期的には、総理総裁の権力が強くなるということが予想されます。ただ長期的には総裁の座をめぐる争いはまた激しくなって、それが再びグループの形成を促すだろうと思います。また、派閥が持っていたリーダー育成機能や新人のリクルート機能が失われると、外部のポピュリスティックな勢力に乗っ取られる可能性は増すのかもしれません。 東国原英夫氏が自民党からの衆院選出馬を要請されて「総裁候補にするなら」と言い、相手にされなかったことがありましたが、ああいうことが起こりやすくなるのでしょう。(本文より)

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派閥の持つ育成機能や集合知のメリットを踏まえ、派閥が無くなることの危険性として「ポピュリズム」を取り上げています。


私は中央大学の出身ですが、就職活動では「うちの学校は派閥がないからなあ~」なんてボヤキを何度も聴きました。

そんなこんなで、当時13行もあった都市銀行の一つに入るこむことに成功した私。

そんな銀行でも、学閥のようなものがありました。

それが「慶応閥」。

「○○銀行三田会」というものがあり、同期の慶応大学出身者から「誘われちゃってさあ」なんて話を聞きました。


特集「日本に根ざす閥の研究」で田中幾太郎氏(ジャーナリスト)が寄稿する「三田会、医学部の抗争、開成高校...... 学閥の現在と功罪」。


<本文引用>------------

昨年夏の甲子園で、慶應義塾高校が107年ぶりに優勝を果たした。決勝戦の5回表、慶應2死二、三塁の場面だった。丸田湊斗選手の左中間の打球を追った仙台育英の中堅手左翼手が交錯。落球し、慶應の勝利を決定づける2点が入った。甲子園を地響きのように揺るがす慶應の大声援の中で選手同士の声がかき消され、エラーを誘発した。関西合同三田会が中心になって動員をかけ、応援でも相手を圧倒したのだった。「相手の選手には気の毒でしたが、三田会の結束力の賜物」と同関係者は感慨深げに語る。(本文より)

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なんか、何でもかんでも「派閥」にむずびつけるのはどうかと。

そんなこと言ったら、甲子園球場の観客は「タイガース閥」、何かとトラブルの話題がある浦和レッズのサポーターは「レッズ閥」と呼ばなければならなくなるような。


慶応大学に入学すれば入れる「三田会」なんて、私から見たら、えらく門が広いかと。

派閥を批判する人って、「おれは中央大学出身! 三田会に入れないのは派閥の閉鎖的だからだ!」とで言いたいんでしょうかね。



三和裕美子氏(明治大学教授)と山田剛志氏(成城大学教授)が寄稿する「株高の裏側で進む「情報の不平等」 株式市場の「欠陥」でアクティビストが不当な利益を得る!?」。 


大企業の株主構成を見ると「○○信託銀行信託口」なんて株主名を見かけることがあります。

これは、○○信託銀行が大株主というわけではありません。


<本文引用>------------

さらに、実際の大株主(アセット・オーナー)が誰で、いつ、どれだけの株式を買ったのかについても、明らかになっていない。資産管理専門銀行に株式の管理を委託する「信託口」という預かり制度があり、有価証券報告書等には大株主としてそれら資産管理専門銀行が名を連ねているので、実質株主である国内外の投資家は陰に隠れる形になっているのだ。

金融庁と東京証券取引所(東証)が共同で示したコーポレートガバナンス・コード(上場企業の統治のための指針)では、企業にガイドラインを策定して株主と対話することを推奨している。ただし、現行制度のもとでは年に2回しか株主が開示されず、しかも信託口名義での開示なので、誰が実質株主なのかは、有償で株主判明調査をしなければわからない。つまり、現在の株主との対話では、企業は実質株主かどうか確認できないまま、株主と自称する人と面談していることになる。

本稿では、投資家の間に生じてい情報の不平等により、一般投資家から、一部のアクティビストと呼ば機関投資家に利益の移転が起きている事例があることを示す。その上で、不当な利益移転を防ぎ、公平市場にするために、どうするべきかを論じたい。(本文より)

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アクティビスト。

「アクティビスト」とは、会社の関係者に対して、社会的な問題や倫理的な問題について声を上げ、会社に変化を促す人。


<本文引用>------------

自社株買いや増配、不採算事業の売却などを発行会社との間で事実上合意した時点で、アクティビストは株式を大量に買い増しておき、情報が正式に開示されて株価が上昇したところで売り抜ければ、確実にキャピタルゲインを取得できるわけだ。情報を知らないまま売却した株主か情報を知っていて利用する株主に利益が移転してしまう。これは公平な取引ではない。株主全員が利益を得るために企業価値を上げてくれるならばよいが、アクティビストだけが情報の偏差を利用して利益を上げるのが問題なのだ。(本文より)

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金融商品取引法では「第百六十六条 会社関係者の禁止行為」でどんな人が対象になるのかを定めています。

なんか、これを読んでいると「アクティビスト」も対象になるように読めます。

それに自社株買い、増配、不採算事業の売却って重要事項のような・・・。


インサイダー取引規制の抜け穴。もっと知りたくなりました。


連載小説「地上の楽園」は第2回。


<本文引用>------------

仁学は生来学ぶことが好きだった。何か一つでも新しいことを知ると、たちまちそれが頭の中でおもちゃの代わりとなった。街頭の玩具屋や駄菓子屋でおもちゃを買ってもらったことのない仁学は、「頭の中のおもちゃ」で遊ぶしかなかったのである。新しい「おもちゃ」を頭に並べるたび、他では味わえぬ興奮と快感に身が震えた。

成長するにつれ、「おもちゃ」は「道具」に、「道具」は「武器」に取って代わった。そうだ、「知識」とは「武器」なのだ。何も持たない自分が世の中と戦っていくには、一つでも多くの武器が必要なのだと確信する。

知識への欲求、知ることの快感は、そのまま劣等感の裏返でもあったであろうし、また、それが将来の夢や理想と結びついて、現在の自分があるとも認識している。(本文より)

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在日朝鮮人の登場人物の一人は学業で身を起そうとし、もう一方の登場人物は暴力で身を起そうとしていきます。



◆頭の中でシンクロした他の完読作品

『中央公論20245月号』 


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■読んだきっかけ:『中央公論20244月号』中央公論編集部

■読んで知ったこと:派閥の何が悪いのか?

■今度読みたくなった作品:『中央公論20246月号』中央公論編集部

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中央公論 2024年 5月号 - 中央公論新社
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