『世界はなぜ過激化(ラディカリザシオン)するのか?』

プチ白人という、白人内に存在する「差別」。

「ホームグロウン・テロリズム(home-grown terrorism)」という言葉を知りました。
「A国に対してテロを起こす」と言った場合、一般的にはA国と敵対関係にあるB国が、テロを起こします。
でも、最近は、「わたし、生まれも育ちもA国なんです」なんて人たちがA国にテロを起こします。
そんな、他国の過激思想に共鳴して、それら過激派と同様の方向性のテロ行為を「ホームグロウン・テロリズム(home-grown terrorism)」というそうです。
ロンドン同時爆破事件やボストンマラソン爆弾テロ事件はこれに該当します。

――――――――――――
書名:『世界はなぜ過激化(ラディカリザシオン)するのか?』
著者:ファラッド・コスロカヴァール
出版:藤原書店(2016.11)
――――――――――――

著者はイランのテヘラン生まれで、イランとフランス両国に国籍を持つ社会学者。
本作では、近年のテロ活動が昔と比べどう変化しているのか、そしてそのキッカケは何なのかを明らかにします。


翻訳ものです。
原題は『RADICALISATION』。
「radicalization」の意味は、「急進化、尖鋭化、過激化」だそうです。


著者は、「国の中に根深く潜む、そして、それだけでは爆発には至らないが、確実に存在している不満」としています。
そして、そうした不満が時間をかけて大きな不満となり、そして、テロを引き起こし、それがメディアによって、全国展開されるプロセスを解説しています。

<本文引用>------------
この過激化現象とは、短中期とともに長期的なプロセスでもある。つまり、人は数日で過激化するわけではなく、長い過程をたどって過激主義者として「熟成」していくものだ。始まりはまず論理手法に小さな変化が表れ、次いで周囲がその人物の感性とか社交性に少し首をかしげるような異変に気づくが、それが何を意味するか理解するには至らない。だが、いったん個人あるいは数人の集団が一定の過激レベルに達すると、すぐに暴力へ移行する可能性がある人質をとり、殺害や殺戮事件を起こしたりする。ひとたび行動が起こされると、メディアなどを通じ、シンボルを生み出す力が動員され、活発な報道によって「悪のヒーロー」像が創り上げられていく。(本文より)(本文より)
------------------------

では、
「国の中に根深く潜む、そして、それだけでは爆発には至らないが、確実に存在している不満」
とは何か?

著者はそれを「差別」としています。

「差別」といって浮かぶのは移民。
著者はそうした「差別」があると同様、同じ国籍を持つもの同士の中にも「差別」は存在するとしています。

<本文引用>------------
フランスにはプチ白人(ちっぽけな白人)とか、時に「糞ったれ白人」と呼ばれて移民系の若い不良が蔑む人たちがいる。彼らは社会の最底辺で生きる者で、経済面でも社会的にも悲惨で価値なしとみなされたと感じており、実際、二重の侮蔑にさらされた者たちだ。経済と社会の本流を成す「本物の白人」たちから無言の侮蔑を向けられ、大都市郊外の同じ若者からは「ここにお前の居場所はない」と罵られる。(本文より)
------------------------

なんか、わかるような気がします。
でも、プチ白人は一方で「差別」を肯定する行動をとります。

<本文引用>------------
一方、プチ白人の側もアラブ系を軽蔑する。彼らから見てアラブ系は公的権力の関心を独占するし、やたら騒乱を起こすために、自分たちも苦しんでいる屈辱的な貧困の現実が覆い隠されてしまうと考えるからだ。共和主義者のエリートや一般国民から、無言の「人種差別」を受けているとも感じている。(本文より)
------------------------

「差別」されても、別に「差別」するものがあれば、精神的な安定が得られるということなのでしょうか。
「差別」による不満が、刑務所や不良仲間といった狭い空間の人間関係の中で、海外のテロ活動と、精神的につながりを
もつようです。

<本文引用>------------
人が過激化していく上で想像力や主体性、他人の体験を取り込む擬態能力、それに代理体験に加え、屈辱感が重要な働きをする社会から排斥された北アフリカ出身の若いフランス人は自分とパレスチナ人を同一視するし、イスラエルや西洋から辱められるアラブのイスラム教徒全体と一体化しようとする。たとえば、イギリスで「バキ」と蔑称で呼ばれるパキスタン系の若者は、インド軍に抑え込まれた紛争地カシミール住民と自分を同一視するだろう。チェチェン出身の青年であれば、弾圧するロシア軍に立ち向かおうとするだろう。現地の現実からかけ離れているのに、代理体験を通じて自分の移民先の国を敵視するようになり、過激化する場合もあるだろう。ボストン・マラソン爆破事件を起こしたチェチェン系ツァルナエフ兄弟がそんな一例だ。(本文より)
------------------------

「差別」が、なぜいけないか?
「差別」によって生み出される根深い不満が、思いがけないタイミングで、とてつもなく大きな暴力で返ってくる。
そんな風に思いました。


――――――――――――
■読んだきっかけ:Amazon
■読んで知ったこと:プチ白人という、白人内に存在する「差別」。
■今度読みたくなった作品:『イスラム過激派から若者たちを取り戻すために』アフマド・マンスール
――――――――――――

395 世界はなぜ過激化(ラディカリザシオン)するのか.jpg

世界はなぜ過激化(ラディカリザシオン)するのか? 〔歴史・現在・未来〕










この記事へのコメント