『MPのジープから見た占領下の東京 ――同乗警察官の観察記』

アメリカ兵のみならず日本人警察官にも正式な敬礼を欠かさなかったマッカーサー。

終戦直後の日本。
ある日を境に日本は敗戦国となり、日本人は敗戦国の国民ということになりました。
一方、当時の日本には、中国人、朝鮮人、台湾人がいたようです。
そこの間には、いろいろトラブルがあったという話を聞いたことがあります。

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書名:『MPのジープから見た占領下の東京 ――同乗警察官の観察記』
著者:原田弘
出版:草思社(1994.12)
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著者は元警察官。
終戦後に配属された「MPライダー」という任務を通じで見てきた、占領下の日本の日常生活を描いています。


「MPライダー」とは何か。

<本文引用>------------
MPライダーの勤務は簡単に言うと、MPとジープに乗って担当地区をパトロールし、各警察署を巡回して事件の連絡や処理にあたることであった。繰り返しになるが、それは交通事故や違反などの交通関係の事件、連合軍将兵や三国人の関係する犯罪の処理、脱走兵の逮捕、闇物資の摘発、オフ・リミット地域への侵入者の排除などであった。さほど歴史的に重要な事件にたずさわったわけではないが、これほど東京の街の状況を毎日つぶさに見ていたのは我々だけではないかと思う。(本文より)
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いわゆる「お巡りさん」とは違うようですね。

本作では、MPライダーになるために一生懸命英語を勉強した話や、実際にMPライダーになってからはアメリカ兵のスラングに悩まされた話は、生き生きと描かれています。


終戦直後は、立場の逆転が随所で見られたようです。

<本文引用>------------
当時、アメリカ大使館に勤務していた一部の日本人通訳やコックたちの鼻息はたいへんなものだった。あるとき、ある日本人通訳の息子が道路の真ん中を歩いていたのを、危険であると警察官が注意すると、親の通訳が「道路の真ん中を歩こうが、どうしょうがこっちの勝手だ。車が来れば自分で避けるから、いらぬ注意はするな」と居丈高にわれわれに抗議してきた。彼らは米軍の権威をかさにきて肩で風を切って歩いていた。おそらくこれらの通訳連中やコックたちが雑役の日本人たちが持ち出すものをチェックするようにと大使館側に告げ口したのであろう。食うや食わずで粗末な服を着た日本人同胞が、家族のために空の弁当箱に残飯をしのばせて持って帰るものを、同じ日本人警察官が所持品検査して取り締まれというのだ。じつにいやなことをさせるものだと思った。(本文より)
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日本人同時でこれです。


当然、中国人、朝鮮人、台湾人とのトラブルもあったようです。

<本文引用>------------
交番の隣には中国人経営の中華そば屋があった。ここも戦争中は肩身が狭く気の毒だというので隣組の人々がそうとう気を使ったり慰めたりしたということだが、終戦と同時に彼らは勝利者としてその地位が逆転、店の前に旗台を建てて、青天白日の旗をかかげ、敗けて落ち込んだ周囲の人々の感情を逆撫でにしていた。この中華そば屋の主人はときどき中国大使館の車で米軍のPXに行って、すっかり連合軍家族の一員のようにふるまっていた。(本文より)
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なんか、想像できます。

<本文引用>------------
日大三商の裏のほうには氷川小学校があり、その一部は都立病院として使用されていた。二十二年の三月ごろだったと思う。断髪姿の若い女性が三、四人、交番の前を通りかかった。誰もが、ひどく見すぼらしい着物を着ている。呼びとめてわけを聞くと、満洲からの引揚げ組だという。進入したソ連兵が婦女子と見ればかたっぱしから暴行したので、女性は髪を男性のように切り、顔も黒く汚して着のみ着のまま逃げてきたのだという。みな栄養状態が悪く、米軍が引揚者に栄養剤などの薬を配給していると聞いたので、氷川小学校へ行くということであった。(本文より)
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<本文引用>------------
台湾人や朝鮮人などのいわゆる三国人は戦後、戦勝国民ということで、各地で統制品、禁制品を大っぴらに売買するなど、無法のかぎりを尽くしていた。昭和二十年の十二月には小石川の富坂警察署が約八十人の朝鮮人の暴徒に襲撃され、多数の負傷者を出すという事件があり、その横暴には目に余るものがあった。上野駅では「コリアン・ポリス」などと腕章をつけた朝鮮人が、勝手に日本人の買出しを取り締まり、運んでいた物を没収したり、勝手に切符を発行したりした。また彼らは満員のパスに乗り込んできたりすると、「お前らは負けた奴らだ。座席から立て」などと怒鳴りちらして客を立たせることも多々あった。しかし、おおかたの日本人は敗戦で気力を失い、腑抜けのような状態でこんなときでも反抗もせず、おずおずと席を譲る光景がよく見られた。これは三国人に対して日本の警察権が及ばないために起こった事態であった。(本文より)
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日本の警察署を襲ったりしていたんですね。

また、著者は警察官として、デモの鎮圧にも参加します。
そこで見てきた社会主義、共産主義を掲げる人たちを目の当たりにします。

<本文引用>------------
昭和三十二年ころからは集団的な紛争が多発し、とくに立川の砂川における基地拡張反対闘争や警職法反対闘争など、大衆を動員した街頭デモが続発した。その折も折、群馬県相馬ヶ原での米兵ジラードによる弾拾い中の主婦射殺事件という、日本人の感情を逆撫でにするような事件が起こり、反米感情が全社会的に高まりつつあった。この機に社会党、共産党はおおいに労働者、学生大衆を煽動し、人々を反米デモに駆り立てた。平和を口にしながらの彼らの過激な言動は、けっして平和を愛する者のそれとは思えないものであった。(本文より)
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著者は、プロの物書きではないため、本作以外の著作はないようです。
それでいて、終戦直後の首都東京の様子を生き生き描写しています。

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■読んだきっかけ:Amazon
■読んで知ったこと:アメリカ兵のみならず日本人警察官にも正式な敬礼を欠かさなかったマッカーサー。
■今度読みたくなった作品:『六月の雪』乃南アサ
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『10万個の子宮 :あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』

「勧奨しているワクチンの積極的勧奨は行わない」という日本の方針。

何かとはやりのデータ分析。
でも、分析結果を人はどう受け入れるのか?
特に問題なのは、自分の主張をおっもいっきり否定するような分析結果が出てきたとき。
データ分析を様々な判断場面で用いようとするなら、まずは、自分の頭がデータ分析を受け入れるように鍛える必要がありそうです。

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書名:『10万個の子宮 :あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』
著者:村中璃子
出版:平凡社(2018.02)
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著者は一橋大学社会学部卒業、北海道大学医学部で医学を学んだ医師。
本作では、現在の日本の子宮頸がんワクチンに対する対応が日本の女性の子宮を傷つけていることになるという主張を展開します。


「子宮頸がん」

私は男のため、病気自体が身近でないので、ピンときっませんが、それでも、ニュースは見ていました。

このニュースの論調は、「ワクチンは危険だ!」「車椅子生活を強いられた少女に補償しろ!」という印象を持っています。
ただ、薬害エイズ訴訟とは、なーんか違う印象を持ってました。

この事件、実は詳細でかなり信ぴょう性のある調査を行っていたようです。

それが、名古屋市による調査です。
調査は、子宮頸がんワクチンの接種と、接種後の身体の変化の因果関係を調べるもの。

<本文引用>------------
そんな中、名古屋市は早々に2015年9月から市内に住む若い「日本人」女性を対象とした独自調査を開始し、わずか2カ月半で結果をまとめて公表した。厚生労働省が2016年の年明けから思春期の疼痛や運動障害に関する似たような全国規模の疫学調査を行うと発表したのが2015年11月27日になってからであることを考えれば、名古屋市の迅速な対応は高い評価に値する。(本文より)
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関係があるか無いか。

これを統計的手法の一つ、有意性検定という手法を用います。

まず「AとBは関係がない(因果関係がない)」という仮説を立てます。
この仮説から、自然と「AとBは関係がある(因果関係がある)」が対立仮説となります。
で、有意性検定で仮説が成立するか、棄却するかを測定します。

もし、仮説が棄却されれば、対立仮説が成立するというわけです。
結果どうなったか?

実は、ワクチン接種と接種後の身体の変化には「関係がない(因果関係がない)」という結果となりました。

<本文引用>------------
以下は、12月14日の会見での河村市長の発言だ。「有意差がない」という速報を見た市長は、「驚いた」と語っている。
「私も国会におりまして、薬害の問題というのは、本当に日本の歴史上、大変な課題を抱えておりまして。私の認識では、一番最初はサリドマイドでしたかね。それから、僕らが国会におったころは、何といってもエイズの非加熱製剤の問題があって、ああいうのもみんな対応が遅れていって、それをどこかの自治体がこれだけの大量に調査をして、そこから一定の結論というか、因果関係の大きな重要な要素を引き出していくというのは、初めてではないですか。初めてだと思いますよ」
「私の素直な感覚を言いますと、役人が言ったやつじゃないですよ。びっくりしましたよ。本当に。まず驚きましたね。この結果はね。こういう格好で、いわゆる子宮頸がんワタチンを打ったか打たないかで、今の数字で言うと、影響がないといううに見られる数字が出たというのは。何でかというと、エイズやサリドマイドで、そちら側の話を今までずっと国会の中でやってきましたので。薬害という方でね。だから、非常に驚きました」
この調査は、国会議員時代に薬害問題で「そちら側の話」をやってきたという河村市長が、被害を訴える団体の要望を受けて開始したものなのだ。結果に驚いたのも無理はない。(本文より)
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どうも、名古屋市は「因果関係がある」という自らの主張を裏付けるために、大規模な調査を行ったようです。

しかし、残念ながら、統計的には、逆の結果を見せつけられてしまったようです。

<本文引用>------------
「市のほうにもよっぽど困ったことがあったのでしょう。その後、謝りに来たのでこの一話はもういいですが、市長がこの調査をやったことはすごいと思うし、どんな結果が出るか楽しみでした。正直、何かは出るかもしれないくらいは思っていました。いや、子宮頸がんがんワクチンの話はそもそもよく知らなかったので、全く分からずにやったというほうがいいかな。でも、結果を見て驚きました。打っている人のほうに圧倒的にバイアスがかかるはずなのに、この結果ですから」
ワクチン接種群の回答率が高かったことに加え、ワクチンの副反応に関心が高い人のほうが「症状あり」と回答する意欲が高いであろうことも考慮すると、この調査には、ワクチン接種群に発症が高く出るバイアスがかかっている可能性が高い。にもかかわらずむしろワクチン接種群に低いと出た結果は、「子宮頸がんワクチン接種と24症状の間に薬害と呼べるような因果関係がないこと」を意味する。(本文より)
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では、「子宮頸がんのワクチン接種と、身体の変化には因果関係ありませんよ」となるかといえば、そうはなりません。
今でも日本は「子宮頸がんのワクチン接種」には、接種させたいのか、させたくないかをはっきり明言することを避けているような状態です。

「勧奨しているワクチンの積極的勧奨は行わない」という、勧奨したいのか勧奨したくないのか何だかよくわからない方針が続いています。

その結果、子宮頸がんにより子宮摘出は今も続いているようです。
統計データをリアルな世界に反映させることの難しさを見たような気がしました。


本作で、彼女は「ジョン・マドックス賞」を受賞しました。
「ジョン・マドックス賞」とは、「公共の利益に関わる問題について健全な科学とエビデンスを広めるために、障害や敵意にさらされながらも貢献した個人に与えられる、2012年に始まった国際的な賞。(Wikipediaより)」だそうです。
ジョン・マドックス賞を受賞したほかの研究者の著作を読んでみたくなりました。

◆頭の中でシンクロした過去の完読作品
『子宮頸がんワクチン事件』
『「小池劇場」の真実』

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■読んだきっかけ:DHCテレビ「虎ノ門ニュース」
■読んで知ったこと:「勧奨しているワクチンの積極的勧奨は行わない」という日本の方針。
■今度読みたくなった作品:『目撃者の証言』エリザベス・F. ロフタス
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『Excel×Python最速仕事術』

Pythonになっても引継ぎ問題は残りそう。

最近何かとはやりのRPA。
先日隣の部署で事件がありました。
どうも、RPAである業務の大量自動化したのですが、そのRPAが見に行くシステムの画面がリニューアルしたため、RPAが機能不全に。
しかし、そのRPAを作ったメンバーはすでに退職しており、そのりのメンバーはそもそもRPAがボタン押すぐらいしかわからず、その部署は大パニック。
どうやら、連日終電まで手作業でリカバリーしたそうです。

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書名:『Excel×Python最速仕事術』
著者:金宏和實
出版:日経BP(2019.11)
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著者は企業経営者にして、アプリケーション開発者兼ライター。
最近注目されてプログラム言語である「Python」によるExcel操作を解説します。

<本文引用>------------
テキスト形式でまとめられたデータをExcelに入力する。Excelのあるシートのデータを別のシートに転記する。Excelのデータを専用の業務システムに入力する。何かと便利に使えるExcelの周囲には、こんなつなぎの部分に手作業がたくさんあります。これは、Pythonプログラムを使って、自動化、もしくは省力化できることがたくさんあるということなのではないでしょうか。月に20時間掛かっている“ホワイトカラー的力仕事”をPythonで効率化することで、5時間で済むようになったら、浮いた15時間で何をするか、楽しみに思えませんか?(本文より)
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うーん、これって、昔読んだExcelマクロの本にもRPAの本にも出てきたような。

本書は簡易に描かれており、読みやすいです。


予約語。

プログラミング言語などの人工言語の仕様にあらかじめ定められている、開発者が付ける識別名として利用できない文字列のことだそうです。

<本文引用>------------
Pythonはセンガクくんが言う通り、勉強しやすいプログラミング言語です。それはPythonがとてもシンプルなプログラミング言語だからなのですが、その最大の理由は予約語の少なさです。覚えておかなければならない予約語が少ないため、とっつきやすいのです。

予約語とはその名の通り、プログラミング言語の中で予約された言葉です。特別な意味を持ちます。Trueやclassがその代表です。予約語が多いと、あらかじめ理解しておかなければいけないことや覚えていないといけない文法が増えます。この予約語がPythonは比較的少ないので、それだけ言語として仕様がシンプルなのです。(本文より)
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そういうことなんですね。

どうも、PythonでExcelを使うためには、いろんなモジュールが必要になるわけですが、それが、オープンに用意され、自由にダウンロードして使えるそうです。

著者はPythonがExcelのVBAに比べての優位性を訴えます。

<本文引用>------------
ビジネスの現場では、多くのデータがExcelで作られています。Excelのみで全て効率良く処理しようとすると、関数を使ったりマクロをVBAで作成したりすることになります。それは確かに便利なんですが、次のような問題が発生することがあります。

・ どこで何をやっているのかわからない。つまり、シート上の関数やExcelの機能でやっていることとVBAでやっていることの境界がわからない
・ 担当者のExcelについてのスキルの差により、引き継ぎがうまく行かない

そこで、データはExcelで作り、Pythonでプログラムを作成して処理する。この二つを車輪の両軸のように回せば、ピジネスの現場のデータ処理はうまく行くのではないかと思いました。本書がそのきっかけになれば幸いです。
では、どうか最後までお読みください。そして、もしよかったら、感想をお聞かせください。(本文より)
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うーん、でも、このお話。
Excel VBAの引継ぎだけではなく、Accessの引き継ぎ、RPAの引継ぎでも出てきそうな問題のように思えます。
もちろ、Pythonの引継ぎにも出てきそうです。


◆頭の中でシンクロした過去の完読作品

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■読んだきっかけ:書店店頭
■読んで知ったこと:Pythonになっても引継ぎ問題は残りそう。
■今度読みたくなった作品:『いちばんやさしい Python入門教室』大澤文孝
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